トナムの労働組合は、労働者層の社会的・政治的組織として、ベトナム社会主義共和国の政治体制の一員となります。このことから、日本における労働組合と大きく性格が異なります。

ベトナムの労働組合は、労働総同盟-省級労働同盟-企業内労働組合の上級労働組合-企業内労働組合の4 レベルからなる1 つの組織であり、企業内労働組合の結成には上級労働組合の承認が必要です。企業内労働組合がない場合は上級労働組合が、就業規則の制定時の意見聴取等の労働組合としての役割を果たします。

ベトナムの労働組合は、①労働者の代理人となり、労働者の法的な権利及び利益を保護するほか、②国家管理、経済社会管理への参加、③労働者への啓蒙、教育等の役割を果たします。

労働者は企業内労働組合を設立する権利があります。使用者は、労働組合を設立する義務を負いませんが、労働者の労働組合の結成、加入、活動のための適切な条件整備等が義務付けられています。
企業内労働組合がある場合、労働者は実際に支給される賃金の1%を、使用者は支払う給与から社会保険料を差し引いた賃金基本額の2%を、組合費として負担します。使用者が負担する組合費については、企業内労働組合がない場合と異なり、上級労働組合へは35%納付され、残りの65%は企業内労働組合に留保されます。

他方で、企業内労働組合がない場合、労働者が組合費を負担する必要はありませんが、使用者は社会保険の支払いの根拠となる賃金基本額の2%を、上級労働組合に支払わなければなりません。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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