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015年末の創設が予定されているASEAN経済共同体は、ASEAN域内での貿易・投資の自由化等を目的としており、ASEAN域内外で活躍する日系企業にとっても重要な進展として、注目を集めています。具体的には、ベトナムおよび外国投資家にどのような影響があるのでしょうか。

まず、2012年に発効したASEAN包括的投資協定は、中長期的には外国投資家にもっとも大きなインパクトがあると見込まれています。同協定は、投資の自由化のみならず、ASEAN域内外の外国投資家の保護をも目的としています。

もっとも、ASEAN域内の貿易促進に大きく貢献しているのは、ASEAN物品貿易協定だといえるでしょう。同協定はASEAN域内の関税撤廃または引き下げを目的としており、ベトナムについては2018年までに大部分の物品につき、関税を0~5%にまでに下げることが予定されています。これはベトナムの企業にとって、他のASEAN加盟国への輸出拡大の絶好の機会といえます。他方、同協定が完全に施行されれば、ベトナム国内での競争激化が予想されます。

また、ASEANシングル・ウィンドウの構築も合意されています。これはASEAN加盟国において、各々のNational Single Window(データの一括入力・処理等のシステム)を稼働し、相互に連携させるものです。簡易化・標準化された貿易手続きと、関係国間におけるデータの交換により、ASEAN域内の貿易コストを削減し、域内を「単一市場」、「単一生産拠点」として集結させることを目指します。ベトナムもこれに対応するための国内法整備を行っています。

今後のASEAN域内外投資戦略の検討の際には、各国の法・税制のみならず、ASEANの枠組みも視野に入れることが有用といえるでしょう。

岸本 明美
Kishimoto Akemi
DFDLに勤務する日本国弁護士及びCFA協会認定証券アナリスト。イングランド及びウェールズ(英国)のソリシター。フランスHEC卒。エネルギー・インフラプロジェクト関連、M&A等を担当。
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