トナムの不動産マーケットは2015年度においてアジア地域全体の成長率を大きく上回り、2016年も引き続きこのペースを持続すると予想されている。その背景には経済成長、規制緩和、それに伴うミドルクラスの成長と海外投資家の拡大がある。

住宅市場では、ハノイとホーチミン市での大量供給にも関わらず、ミドルクラスそして海外投資家からの期待で需要も十分に追いついた。トレンドとしては、富裕層を主力ターゲットにしていた数年前に比べ、売値や部屋数などにも幅がある内需向けへと変化しつつある。また、2015年の外国人への住宅法の規制緩和により、大都市内部だけでなく各リゾートの開発にも拍車が掛かっている。

オフィス市場はハノイとホーチミン市で共に順調であるが、両都市では今後の供給量に大幅な差がある。ハノイでは今年から2017年にかけてオフィスの大量供給が予定されているが、ホーチミン市ではその半分以下の量となっている。そのため、空室率が低いホーチミン市はランドロード(家主)により有利なマーケットと言えるだろう。

両市のどちらにおいても新しい物件は、使い勝手の良いレイアウト、世界基準に似合ったスペック、環境に考慮した物件などの新たな試みがなされているのが特徴だ。

2014年から2015年の小売総額成長率が9.1%という、世界的にも高い数字を記録したベトナムでは、住宅市場に続いてリテール市場も今後の大幅な成長が見込まれており、国内外のデベロッパーが商業施設開発に力を注いでいる。国内外の小売業者でのM&Aも盛んに行われ、今後のベトナムのリテール市場に期待を向けている。

ハンフリー・モーガン
Humphrey Morgan
SAVILLS VIETNAM LTD.のNational Head of Commercial Leasing兼Japan Desk。イギリス出身。ハノイとホーチミン市の商業物件チームを率いる一方、ジャパンデスクを開設。ベトナム全土で取引実績多数。日本で5年間勤務。