回はベトナムの個人所得税(以下PIT)法上の、「居住者」「非居住者」それぞれのPITの取り扱いを説明します。

「ベトナム居住者」の場合、全世界所得に対して超過累進税率により総合課税されます。「全世界所得」とは、ベトナム国外の源泉所得も含まれます。つまり、ベトナムと日本の双方で給与支給を受ける場合、双方の給与所得を合算して申告する必要があります。

超過累進税率とは、所得が一定額以上になった場合にその超過金額に対してのみ、より高い税率を適用する方式であり、高額所得者ほど税負担が大きく、最高税率は35%となります。年間総支給額が約500 万円を超える方は、その越えた金額以上に最高税率が適用されます。月次または四半期の申告および納税、さらに、年1 回の確定申告が必要となります。

「ベトナム非居住者」の場合、ベトナム国内源泉所得のみに対して源泉分離課税されます。ベトナム国内源泉所得とは、ベトナム国内にその所得の発生源泉がある所得をいい、給与をどの国で受け取るかで判断されるものではありません。給与所得については一律20%の税率が、その他の所得については所得の種類に応じ各税率(0.1 ~10%)が適用されます。非課税所得、所得控除および税額控除は認められません。

源泉分離課税とは、他の所得と全く分離して、当該所得を支払う者が支払いの際に適切なPIT の源泉徴収および納税を行うことにより、当該所得を受け取る個人のPIT 納税手続きを完結させます。よって、PIT の確定申告は不要となります。次号は、PIT における非課税と所得控除、その他留意点について解説します。

津田 栄治
Tsuda Eiji
AGS ハノイ事務所に勤務する日本国公認会計士試験合格者。住宅メーカー・商社で海外駐在。メーカーでの経理を経て、2013 年より現職。法人設立、会計税務などを担当。
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