んにちは、AGSの辻です。前号でご説明しましたように、M&Aによる進出には資本譲渡、もしくは事業譲渡というスキームが代表的ですが、今回はそれぞれの税務上の留意点をご案内します。

まず、資本譲渡にはそれに対する特別な税目はなく、法人所得税法および個人所得税法により、その取扱いが定められています。進出時の留意点としては、譲渡人がベトナム外国法人の場合に法人所得税率が20%であることは変わりませんが、ベトナムに所在する取引関連者によって申告納税が行われることになります。

ベトナムに所在する取引関連者とは、譲受人がベトナム内国法人の場合は譲受人、譲受人もベトナム外国法人の場合は、資本譲渡対象会社となります。また、譲渡人が外国法人の場合、申告納税期限は管轄機関の承認日から10日以内、承認がない場合は契約書日付より10日以内とされています。

非常にタイトな期限となっていますので、予め納税資金などの準備をしておく必要があるかと思います。なお、法人間の資本譲渡に係る税金は譲渡益に課税されますので、譲渡価格のみならず、譲渡原価の算定にも留意する必要があります。

次に事業譲渡についてですが、一般的な内国法人同士の取引と同様に、譲渡人は譲渡代金の公式インボイスを発行し、譲受人はその公式インボイスを基に損金処理および付加価値税控除を行うことになります。通常の取引と同様に、公式インボイスや関連証憑の保管が重要となります。

今回ご紹介しきれなかった細かな税務上の留意点も多々ありますので、M&Aを行われる際には、専門家にご相談されることをお勧めします。

辻 雄太
Tsuji Yuta
AGSホーチミン事務所に勤務する米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
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