んにちは、AGSの辻です。前回は、年次活動報告書提出の重要性をご案内しましたが、今回のテーマは駐在員事務所の活動範囲です。

2016年3月10日に施行された政令07/2016/ND-CPによって、「ベトナム国内のパートナーとの契約、あるいはベトナム市場に関連した契約を外国法人が締結した場合の指導・監督活動」という部分が削除されました。そのため、駐在員事務所の活動範囲はより小さくなり、窓口や、事業促進協力活動、市場調査などの補助的なものに限定されています。これは、駐在員事務所の活動を厳しく取り締まるというベトナム政府の意思表示だと考えられます。規定外活動によるリスクはいくつか考えられますが、ここではとりわけ税務リスクについて見てみましょう。

駐在員事務所は直接的な利益獲得活動を行わないことを前提に、活動維持のための本社からの必要経費収入を含め、法人所得税は非課税とされています。他方で、ベトナム法人所得税法においては、駐在員事務所が法人所得税の納税義務者ではないという明確な規定はありません。

このことから、駐在員事務所がその活動範囲を超えて、直接的な利益獲得活動を行った場合、法人所得税法上の納税義務者とみなされ、法人所得税の課税を受ける可能性は否定できません。あるいは、駐在員事務所が本社の事業活動を行っているとみなされ、本社が外国契約者税の課税対象となる可能性も十分に考えられます。

現状ではまだ、上述のような形で駐在員事務所が課税されたケースは多くありませんが、今後の対策については、一度専門家に相談することをお勧めします。

辻 雄太
Tsuji Yuta
AGSホーチミン事務所に勤務する米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
http://ags-vn.com