回は、ベトナム入国初年度の課税期間について説明いたします。

ベトナム個人所得税法では、暦年でのベトナム滞在日数が183日以上の場合、居住者として判定され、課税期間は暦年となります(通達111/2013/TT-BTC 第6条1項)。ただし、これまでの税法では、課税期間の起算日がいつであるか、すなわち、入国日から課税期間が始まるのか、それとも暦年の最初まで遡り、1月1日から課税期間が始まるのかが明確に規定されていませんでした。そのため、ベトナム入国前の期間について、日本で居住者として課税される一方で、ベトナムでも居住者として課税されるという国際的二重課税が発生する可能性がありました。

この点、2014年に公布された通達119/2014/TT-BTCにおいて、ベトナムと国際的な二重課税を防止するための租税条約を締結している国の居住者に限り、課税期間の起算は入国月からである旨が明確に規定されました(通達119/2014/TT-BTC 第2条)。そのため2014年9月以降は、ベトナム入国前は日本居住者、ベトナム入国後はベトナム居住者として課税関係が整理されました。

しかしながら、実務的には2014年の確定申告において、1月1日に遡る旨を通知された事例が確認されており、地域によってはオフィシャルレターも発行されています。これは、通達119の施行が2014年9月からであるため、それ以前に入国したケースについては暦年に遡ると解釈が可能なことが原因であるとも思われます。

このようにベトナムにおいては、法律の規定が不明確であることから、地域によって運用が異なるケースがしばしば見られます。2015年の確定申告でも、十分に検討を行い、慎重な対応を行うことをお勧めしております。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
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