回から12号まではベトナム付加価値税(以下VAT)について、VATに関する通達219/2013/TT-BTC号に基づいて解説して参ります。

ベトナムではインボイス方式を採用しており、公式の領収書としてVATインボイスや販売インボイス等を使用して、税額の計算を行います。インボイス方式のもと、複数税率(標準税率10%、必需品等5%、輸出品0%)を採用しています。また、確定申告がありません。

VATの計算方式には控除方式と直接方式の2つがあります。控除法は、VATインボイスに記載された売上げVATと仕入れVATをそれぞれ積上計算し、この差額から未払税額または還付税額を計算します。例えば、輸出加工型企業の場合は、経常的なVAT還付を行うために控除法を選択適用する必要があります。

一方の直接法は、日本の簡易課税方式と類似した方法であり、販売インボイスを用いて課税売上高に税率を乗じることで、未払税額を計算します。多くの日本企業が採用している一般的な方式は「控除法」になりますが、例えば小規模サービス企業やIT企業の場合は、経常的に発生する仕入れVATが少額となります。そのため、実務上の簡便性を重視して、直接法を選択適用することも検討可能です。なお、EPEは原則としてVAT申告は行いません。

VATでは輸出免税(0%税率)の適用要件、仕入れVATの控除要件、インボイスの適切性等に注意する必要があり、これらについての書類に不備等があった場合には、追徴や罰金が生じることもあります。そのため、日頃から各取引の根拠となる、契約書等の準備を心がけることが重要です。

次回はVAT2回目として、仕入れVAT控除要件について解説致します。

津田 栄治
Tsuda Eiji
AGS ハノイ事務所に勤務する日本国公認会計士試験合格者。住宅メーカー・商社で海外駐在。メーカーでの経理を経て、2013 年より現職。法人設立、会計税務などを担当。
http://ags-vn.com