EY大手会計事務所のベトナム事情 No.019

配当を支払うベトナム子会社への課税

EYベトナムの小野瀬です。第19回の対談は、日系企業担当の西川貴陽ディレクターです。

小野瀬 以前の対談で親会社へのロイヤリティの支払いが法人税の観点から厳しくなっているという話があったと思いますが、それに伴い配当により親会社に資金を還流したいという企業様が増えているように感じます。配当にあたって、どのような税金がかかりますか。

西川 配当にあたり、①配当を支払うベトナム子会社への課税(源泉税)と、②配当を受け取る親会社への課税の2種類があります。

①の配当を支払うベトナム子会社側については、日越租税条約上、ベトナムは10%の源泉税を課すことができるよう規定されています。ただし、ベトナム国内法に基づき、実際には源泉税は徴収されません。

配当を受け取る親会社への課税

小野瀬 ベトナムでは支払配当金に対して10%課税する権利があるにも関わらず、国内法により放棄している形となるのですね。②の配当を受け取る親会社側の税金はどのように課税されるのでしょうか。

西川 親会社が日本にあるとの前提であれば、日本の法人税が課されることになります。ただし、外国子会社配当益金不算入制度があるため、配当額の95%は益金不算入となります。

したがって、配当額の5%のみが課税対象となり、日本での実効税率が30%とすると、5%×30%の1・5%が法人税等として徴収されます。また、ここで言う外国子会社の定義は通常の海外子会社の定義とは異なり、(1)ベトナム現地法人に対する出資比率が25%以上かつ、(2)保有期間が6ヶ月以上の会社を指します。

したがって、子会社ではなく、関連会社であっても、上記(1)(2)を満たす限り、配当額の95%は益金不算入となります。

小野瀬 配当による還流の場合、支払税額は少ないですね。ベトナムでのロイヤリティ課税のリスクが高まる中、資金還流方法の再検討の余地がありそうです。

小野瀬 貴久
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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