EY大手会計事務所のベトナム事情 No.022

棚卸後の差異に対する損金算入

EYベトナムの小野瀬です。第22回の対談は、日系企業担当の原田潤一ディレクターです。

小野瀬 最近、税務調査において、会社が棚卸を行った際に発生した棚卸差異、つまり帳簿上の在庫数量と実在庫との差異について、損金算入を認めず、法人税が課税されるという話をよく聞きます。

原田 はい。通常どの会社でも棚卸を行うと、帳簿数量と実際の数量とで差異が発生します。在庫は日々動いているため、多くの会社において、帳簿上の数量と実際の数量が一致しません。

また、在庫の種類が多岐に渡る場合は特に、入庫、出庫時の処理ミスや、盗難、紛失により帳簿より実在庫の方が少ないケースが多く発生します。

この差異は、会計上「棚卸減耗損」として処理され、日本では軽微な金額のものについては発生理由に関係なく、税務上損金算入されます。一方で、ベトナムでは軽微なものであっても発生理由に応じて、税務上の損金算入を否認されるケースが増えています。

小野瀬 日本とベトナムでは、「棚卸減耗損」の損金算入の要件が異なるんですね。

「棚卸減耗損」の税法上の規定

原田 はい。ベトナムでは2014年6月に税務当局から発行された省令78/2014/TT―BTCによると、自然災害、火災等の不可抗力によって在庫に損失が発生した場合にのみ損金算入が認められます。それ以外の入出庫における処理ミスや盗難、紛失による在庫の「棚卸減耗損」は、不可抗力による損失ではないとみなされ、損金算入が認められていません。

また、昨年1月に発行されたOfficial letter911/BTC―CSTにおいても、小売業で発生した盗難による在庫の紛失については不可抗力によるものではないため、損金算入ができない旨が明記されています。この問題については、ベトナム日本商工会議所およびホーチミン市日本商工会議所が、一定の棚卸差損率までの損金算入を認めてもらえるよう税務当局に要望しています。

小野瀬 貴久
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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