賢者の税務・会計術 vol.004

関連者間の取引が移転価格税制の対象に

こんにちは、AGSの辻です。さて、今回は最近耳にすることが多くなった移転価格税制がテーマです。

「そもそも移転価格とは何でしょうか?」というご質問を頂くことがありますが、移転価格とは、関連者間の取引価格を指します。
関連者の定義は各国の税法によりますが、ベトナムでは基本的に、直接的または間接的に25%以上の資本関係を有する者が関連者と見なされ、この関連者間の取引が移転価格税制の対象となります。
ではなぜ、関連者間の取引価格が税務上問題になるのでしょうか。以下で例を挙げながら見ていきましょう。

◇例1:ベトナム子会社が製造した原価100USDの製品を100%親会社に150USDで販売する。この取引でベトナム子会社が得る粗利益は50USDとなる。

◇例2:ベトナム子会社が製造した原価100USDの製品を100%親会社に130USDで販売する。この取引でベトナム子会社が得る粗利益は30USDとなる。

上記の例1と例2では、ベトナム子会社の製造原価は同じですが、親会社、つまり関連者との取引価格が異なっています。この関連者との取引価格の違いによって、例2のベトナム子会社の粗利益は例1に比べてより少なくなっており、これはつまり、ベトナムで納税する法人所得税が少なくなることを意味します。

税収減防止のため取引が適正価格かを調査

このように、ベトナム政府からすれば、関連者間の恣意的な価格決定によってベトナムの税収が減るのは看過できないので、適正な価格で取引しているのかを調査する、というのが移転価格税制の大枠となります。

企業は関連者間の取引価格が適正であることを文書で説明する必要がありますが、詳しくは次回ご案内します。

辻 雄太
米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
A. I. Global Sun Partners JSC
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