前回まで、レジリエンスプログラムで活用するATCモデルについてご紹介させて頂きました。

感情と行動の間にある思考を書き換えることによって、その後の行動を非生産的なものから生産的なものに変えられるという内容でした。本日は、その思考について、もう少し掘り下げます。

直感での判断は
間違いばかり?

2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー』の中で、「人間がもつ2つの思考パターン」に言及しています。

【ファスト思考】直感や感情的な連想に基づく判断

【スロー思考】注意深く合理的思考に基づく判断

事実関係を見ないで、過去の経験に基づき、直感的に感情的に判断してしまう思考を【ファスト思考】といいます。物事を認識した時に、人は無意識にファスト思考で判断する傾向があります。

これは良くも悪くも、日々の生活の中で「こういうことがあった時には次はこうなる、だからこういう行動を取ろう」と、過去の経験を脳が記憶しており、素早く物事を処理していくために必要な機能なんですね。それが時に非生産的な行動を引き起こしてしまうのです。

「決めつけ」で
確信してしまう

人事異動で〇〇地域に転勤になった。これは左遷だ。自分は期待されていないに違いない。転職しようか…。

ファスト思考には非生産的な行動に繋がる先入観や固定観念など、7種類があります。これはその1つ、①「勝手な決定・最初に答えありき」という思考。根拠や証拠がほとんどないのに、つい確信してしまうことです。

前述の事例では、「この地域への異動は左遷だから、自分は期待されていない」と勝手に決めつけています。でも本当は、力があるから立て直してほしい、というトップの期待かもしれません。想定外の出来事に直面した時、人は【ファスト思考】で判断しがちだと知っておく必要があります。

非生産的行動とは、「私はあのとき、なぜそんなことをしてしまったのだろう? 後悔してもしきれない」という事象です。「普段ならそんなことは決してしないのに…」

皆さんも、皆さんの部下にも思い当たる決めつけ、ありませんか。

知識 大輔 Chishiki Daisuke
日本で営業責任者を務めた後、中国法人で5年間、総経理、董事長を経験。2020年8月からベトナム法人のゼネラルダイレクターに就任。
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