【ベトナム経営】vol. 41
パナソニックベトナム
Panasonic Vietnam
文:杉田憲昭(GRAFICA)
これまでも、これからも
社会と人々の健康へ貢献し続ける
2021年7月にベトナム進出50周年を迎えたパナソニック。総合家電からウェルネスソリューション企業へ事業転換を図り、ベトナムへの更なる貢献を目指す同社代表の丸川洋一氏に、次の50年への思いと取り組みを聞いた。
生活スタイルの変化に伴い
移り変わる消費者ニーズ
――進出の経緯と沿革を教えてください。
丸川 ベトナムへの製品の輸出は1950年代から始まっていますが、正式に会社を設立して進出したのは1971年。合弁会社によるラジオやテレビの製造・販売からスタートしました。戦争の影響で一時的に操業を停止する時期もありましたが、長年にわたり現地の消費者や政府・パートナー様の支持をいただき、この2021年7月5日、おかげさまで進出50周年を迎えることができました。
――50年の間で、消費者にはどのような変化がありましたか?
丸川 進出当時のベトナムは、まださまざまな物資が不足している時代でした。そのため「迅速かつ大量に、そして品質の良いモノを安く提供すること」が総合家電企業としての弊社の使命でした。
しかし、今では国民1人あたりのGDPも3500USDを超え、私が赴任した2011年当時と比べても、その発展の速度は目を見張るものがあります。
なかでもテレビなどの家電やスマートフォン、モーターバイクなどの普及率は非常に高く、冷蔵庫に至っては既に7〜8割程度の家庭が所有しています。
消費者の意識も以前とは大きく異なり、生活をより便利で豊かにしてくれるなど、機能だけではない付加価値や、商品を購入することによって変わる生活環境自体が注目されるようになってきました。
例えば冷蔵庫では近年、微凍結機能を備えた商品が人気を集めています。食品の鮮度を保つ効果はもちろんですが、大きな魅力となっているのが「時短」。ベトナムは共働きの家庭が多く、家事が生活の大きな負担となっています。そこで、解凍が不要な微凍結機能を使うことで、その手間を大幅に省けることが高く評価されています。
今や「ただ冷える箱」というだけでは冷蔵庫はその存在価値を示すことができません。生活スタイルの変化に合わせ、消費者の生活をより便利で快適にできる製品をいかに生み出せるかが重要なのです。
また、中国メーカーなど、安くて機能やデザインに優れた製品も数多く出てきています。そこで弊社は2020年、当社の存在意義を見つめ直し、従来の「総合家電メーカー」から事業方針を転換。人々の生活や健康への貢献を使命とする「ウェルネス・ソリューション・プロバイディングカンパニーへ」という新たなビジョンを制定しました。
3本柱のソリューションを軸に健康的な生活を応援
――新方針のもと、特に注力している取り組みは何ですか?
丸川 従来は家電というモノの販売を主体としていましたが、今後はソリューションや体感、体験などのコト・価値を生み出して、ご提供していきたいと考えています。
例えばベトナムでは経済の発展に伴い、公害などの社会課題が深刻になっています。そこで掲げたのが「空気・水・食」の3つの柱。特に新型コロナ感染症の影響もあり、昨今は空気・空調に関する関心が高い。2021年1月より開始した、東南アジアで配車・宅配などのサービスを行う「グラブ/Grab」との提携も、そのひとつです。
この提携はアジア重点市場での社会貢献・啓蒙活動の一環であり、アジア主要5都市で約5500台、ハノイとホーチミン市に各1000台のプレミアムカーに「ナノイーX」発生器を搭載しました。
「ナノイーX」は脱臭や、菌・アレル物質の抑制などに効果を持つ多量のOHラジカルを含む微粒子イオン。その発生器を車内に設置することで、乗客はもちろん、不特定多数の人と接触する乗員に対しても、感染リスク低減など、快適かつ安全な空気環境や移動空間をご提供するものです。
また、空気清浄機やエアコン、冷蔵庫など様々な商品にナノイーの技術を広げるとともに、今後はオフィスビルやホテル、アパートなどの建築プロジェクトにも積極的に参画し、事業領域を広げていきたいと考えています。
さらに、ご提供するさまざまなサービスの黒子的な役割を担う技術の研究開発部署を工場内に設置しています。ベトナムを拠点にアセアン諸国に向けた高度な技術と設計を持つ製品開発など、研究開発分野でも一層の拡充を図り、皆さまの健康に貢献して参ります。
――次の50年に向けて、
目標や展望を教えてください。
丸川 新型コロナ感染症の蔓延により、内需の落ち込みや停滞をはじめ、ベトナム全土が多くの困難に直面しています。しかし、長期的に見るとベトナムはアジアの中で今後大きく成長していく国であり、有望な市場であることは間違いありません。その中で、ベトナムの人々のウェルネスな社会生活や健康、持続的な社会の発展に、どのように貢献できるかが今後の新たな使命といえます。
加えて、工場のカーボンニュートラル化や最先端技術を含めた自社開発体制の底上げ、環境保護の啓蒙活動や、現在既に行っている学生への奨学金支援による教育レベルや人材層の向上など、横断的な取り組みもしっかりと続けていきたいと思っています。そして、それらのソリューションの提供事例とノウハウを蓄積することで、他のアジア諸国や地域にも同様のビジョンを広げていければと思っています。
「ベトナムナショナル」として1971年にベトナムへ進出。家電・電材を中心とした製造・販売を手がけ、現在はグループ7社、従業員数は約7000人。2021年の進出50周年を機に「ウェルネスソリューション」をテーマとした事業方針に転換。ベトナム社会への貢献を目指す。
YOICHI MARUKAWA
1993年、松下電器産業入社。日本や深セン、香港などでの勤務を経て、2011年に渡越。2019年より「パナソニック・セールスベトナム」、2020年から「パナソニックベトナム」と、現在2社の責任者を兼務。2020年にはベトナム日本商工会議所(JCCI)工業部会の理事も務めた。
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