越の国の法律相談 No.048

2021年11 月24日、日本・ベトナム間での刑事司法共助条約の署名が行われました。それぞれの国会で承認され、承認を通知する外交書面を交換した日から30日後に発効します。

①第3の協力要請
ルート

現在、日本からベトナム、またはベトナムから日本に対し、刑事捜査への協力を求めるルートには、①2国間の外交ルート、②国際刑事警察機構(インターポール)経由、があります。
 
本条約が発効すると、③両国の「中央当局」(日本側は法務大臣および国家公安委員会等、ベトナム側は最高人民検察院)間での協力要請が可能となります。

②協力要請の範囲

本条約の下で、相手国に対して協力を要請できるのは、相手国の国内で、相手国の法令に基づいて行われる捜査活動です。
 
主なものとしては、▽証言・供述の取得、物件の捜索・差押え、▽人・物件・場所の見分・特定、▽公的機関の保有する物件の提供、▽自国での出頭が求められている者に対する招請の伝達、▽証言の取得などの目的で被拘禁者の身柄の一時的な移送、▽刑事手続文書の送達、▽被拘禁者の身柄の一時的な移送、▽犯罪の収益・道具の没収・保全、などがあります。
 
なお、日本は米国・韓国の2ヶ国、ベトナムは中国・韓国・フランス等の14ヶ国と「犯罪人引渡し条約」を、またロシア・ラオス・ポーランドとの間で「犯罪人引渡し」に関する規定を含む司法共助条約を、それぞれ締結しています。
 
本条約の内容には、相手国に逃亡した被疑者の身柄の引渡しは、含まれておらず、これとは別に、日本・ベトナム間の2019年「受刑者移送条約」により、裁判所の判決言渡後の受刑者の本国移送が取り決められています。

③協力を拒否で
きる理由

本条約は、相手国から協力要請されても、自国の主権・安全、対象者の基本的人権などの侵害の危険や、本条約や国内法令に合致しないなど、一定の状況があると判断したときは、協力を拒否できるとしています。

 

小幡 葉子 Obata Yoko

日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。

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