ベトナムの希望と懸念
2018年注目4業界
順調に成長を続けるベトナム経済において、その動向が特に注目される分野がある。完成車の輸入関税が撤廃された「自動車」、急騰を続ける「株式」、バブル再燃とも言われた「不動産」、経済発展に連れて拡大する「物流」だ。第一人者に「2018年」を聞いた。
2017年に50%弱の伸びを記録したVNインデックス。その勢いは年明けも変わらず、とうとう1000ポイントを超えた。国営企業の株式売却、大手企業のIPO、経済成長が続く中、ベトナムの大手証券会社は1300ポイントに届くと予想する。
多くの業界で株価上昇 法改正なども後押し
ベトナムの代表的な株価指数であるホーチミン市証券取引所(HOSE)のVNインデックス。そのポイントは2017年初の700弱から急伸を続けて、1年間で約48%アップし、上昇率で世界3位となった。そして2018年初にはついに1000ポイントを超えた。
「銀行、不動産、建設、建材、証券サービス、石油、天然ゴム、電子機器など多くの業界で成長が続き、EPS(1株当たりの純利益)が良い企業はすべて伸びている感じです。マクロ経済が成長していることが大きいです」
2017年第4四半期の数字がまだ(取材時)なので昨年初からの9ヶ月で見ると、ベトナム最大の株式市場であるHOSE、加えてハノイ証券取引所(HNX)と未上場株取引市場のUPCoMのほぼすべての上場企業の利益は、前年比で約23%上昇しているとMr. Linhは語る。
また、株価急騰の大きな理由は、ビナミルクやサイゴンビール・アルコール飲料総公社(Sabeco)など国営企業の政府持ち株の売却と、ベトジェットエアやビンコムリテールなど大手企業の新規株式公開(IPO)。これらの「新しい供給」が昨年活発に行われ、株が大量に購入された。中でも目立ったのは外国人投資家だ。例えばビナミルクはシンガポール、Sabecoはタイの投資家が多く購入したようで、こうした外国人投資家の動きに合わせるようにしてベトナム人投資家が続いたという。
「2017年、外国人投資家は約20億USDの買い越し。2016年が約3億USDの売り越しでしたから驚異的な転換であり、外国人投資家はHOSEの平均で17~19%を占めるほど増加しました。彼らは時価総額の高い、一流企業が好きですね」
昨年8月から始まったデリバティブ(金融派生商品)の影響も大きい。ベトナムは個人投資家が多く、リスク回避のツールと考えた彼らの投機や投資が進んだという。また、昨年11月には国会で改正金融機関法が可決。経営危機に陥って再建が見込めない金融機関には、破産を適用する規定が盛りこまれた。これが銀行業界発展の原動力となると市場に好感を持たれ、この傾向が他の業界にも広がったという。
「マクロ経済の成長、企業利益の改善、IPOに加えて他の好材料もあり、株式市場は急成長しています。確かに上がりすぎではありますが、懸念材料はないと考えています」
外国人への魅力が増加 今年の注目業界は?
ベトナムの経済発展の一因にFDI(海外直接投資)企業がある。投資額が多いのは日本、韓国、シンガポールなどで、中でもサムスンを代表とする製造業の存在感は大きく、輸出超過による貿易黒字にも大きく貢献した。
「FDI企業による直接投資は増加し、今年も経済を牽引するでしょう。また、政府株を売却する国営企業は今後400社程度あり、大手企業のIPOも続き、マクロ経済も堅調に推移すると思います。2018年のGDPは6.5~6.7%、インフレ率は3%程度の低水準になると考えます」
外国人投資家による投資額の拡大も見込まれる。これにはVNインデックスのPER指数(株価収益率)は20倍程度であり、以前より上昇はしたものの、他国に比べて魅力的という背景もある。また、現在のベトナム株式市場はアルゼンチン、パキスタン、UAEなどと同じ「フロンティア市場」に格付けされているが、中国、ロシア、タイなどの「新興国市場」への格上げが期待されている。新興国市場と公認されれば情報の透明性や市場の信頼性が得られ、時価総額も上がって、海外からの投資増はほぼ確実だ。
「ベトナムの株式は潜在的な成長可能性が高く、新興国市場への格上げは2019年末と見込みます。また、現在の株式市場の時価総額はGDPの70%を超え、既に政府の目標に達しています」
今年の注目業界を尋ねると、銀行、鉄鋼、不動産、リテール、石油、証券サービスとのこと。製造業は上場していないFDI企業が多いので含めていない。銀行は上記の改正金融機関法で銀行間の競争劇化が予想されるためだ。鉄鋼は安価な中国製の供給が一段落したこと、インフラ整備の拡大、不動産建築の材料となることが理由。石油は昨年低迷したが10~11月に価格が60~65%上昇し、今後も継続が予想されるという。
「おすすめの銘柄は、外国人枠の上限まで買われている銀行ではなく、上限が撤廃された証券サービスです。弊社のような会社ですね(笑)。変動があるため今年のいつとは言えませんが、VNインデックスは1300くらい行くと思います」
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