2016年3月に現地法人を設立し、2017年5月に海外初の自社工場が完成した湖池屋ベトナム。日本だけでなく台湾やタイなどでも人気を誇る、激辛ポテトチップス「カラムーチョ」の販売を同年10月に開始した。今後3年で同商品のブームに火をつけ、出荷ベースで20億円を目指すという。

生産が一筋縄では行かずとも市場成長の可能性に期待

Deputy General Director 代表取締役社長 三上賢治

―― なぜ海外初の自社工場をベトナムに設立したのですか?

三上 日本では少子高齢化が進み、スナック菓子市場が縮小しつつあります。そこで弊社は、平均年齢が若く、人口が多いアジアへの進出を検討しました。ベトナムのスナック菓子市場は日本と比べて10分の1と言われており、またタイのように多くの他社メーカーがすでに地盤を固めている状況ではないことから、今後の大きな成長が見込めると判断しました。支店は台湾や香港、タイで開設していますが、自社工場はベトナムが初。それほど、ベトナム事業の期待度は高いのです。

―― ベトナムのスナック菓子市場についてもう少し詳しく教えてください。

三上 ベトナムでは特に学校周辺での売れ行きが好調です。つまり、スナック菓子市場は主に小・中・高校生が支えており、確かに、小売店などでスナック菓子コーナーを見てみると、子ども向けのフレーバーが多いのに気づかされます。大人は袋菓子をあまり買わないようなので、その市場にいかにして取り組んでいくかが重要なキー要素でしょう。

一方で、子どもが買ってきたスナック菓子を、親が家で食べているという調査結果もあります。日本では1984年の「カラムーチョ」販売以降、フレーバースナックの売上げが飛躍的に伸びましたが、その背景には「大人の消費者」の増加があると考えます。ベトナムでもカラムーチョをきっかけに30代、40代がスナック菓子を酒のつまみなどとして購入し、人気を博す可能性を秘めていると思っています。

―― 工場稼働までにはどのような苦労がありましたか?

三上 現地法人を設立したはいいものの、その時はツテもなくコネもない。ジャガイモなど原料の調達方法もわからない状態でした。しかし、いろいろな日系企業さんを訪問すると、ベトナムで同じ船に乗った運命共同体と感じてもらえたからか(笑)、たくさんの情報をいただけました。こうして一つずつ壁を乗り越えていくことができました。ただし、ベトナムは冬に育つジャガイモの安定供給が見込める環境になく、調味料も日本のように種類が豊富でないので、今後の調達は課題の一つとなっています。

現地の価格帯で挑戦 欠品になるなど販売は順調

11月開催のオープニングセレモニーで、イメージキャラクターのケイティ・グエンさんとドラえもん

―― 「湖池屋ポテトチップス」や「ポリンキー」などではなく、カラムーチョの販売に絞った理由とは?

三上 台湾やタイなど、他のアジア諸国ではすでにカラムーチョの地盤が固まっていたこと、また日本製品を持ち込んで市場調査を行った結果、カラムーチョの評判が一番良かったことも決め手となりました。ただ、ベトナム人からは日本の商品では全く辛くないと言われ、それならばとタイの商品を出したら、今度は塩辛すぎると言われました(笑)。そこで塩分を何度か調整し、ベトナム版カラムーチョが完成したのです。

味の開発は、日本で行いました。種類は3つで、ポテトチップスのスパイシー味、コーンスナックのスパイシー味とスパイシーシュリンプ味があります。弊社のベトナム人スタッフを見ていると、辛い辛いと言いながらずっと食べている人もいます。これがカラムーチョの面白さですよね。ちなみに、コーンスナックのシュリンプ味はベトナムオリジナル商品です。

甘味、辛味、酸味、そして旨味のバランスを強く意識し、辛さだけでなく、もちろん美味しさにもこだわったものですので、日本へのお土産にもおすすめできます。

―― 1袋7000VND~と、現地に合わせた価格になっていますね。

三上 ベトナム人に買ってもらってこそ成功といえるので、ジャガイモやトウモロコシなど原料のほとんどはベトナム産を使用し、まずは価格を抑えるところから始めました。パッケージにはドラえもんを起用して、日本製品であることをアピール。その結果、ファミリーマートなど一部店舗では欠品となり、ありがたいことに陳列棚を拡張してもらうことになりました。その後にイオンでも販売を開始し、導入は順調だったといえます。

しかし、安心ばかりしていられません。今後はローカル小売店での販売にも力を入れていかなければなりませんし、知名度もまだまだ低い。ターゲットとなる年齢層の拡大も大きな課題です。

―― 今後の目標を聞かせてください。

三上 ベトナムで成功する秘訣は、1つに絞って集中することだとアドバイスを受けたことがあります。私もそう考えており、しばらくはカラムーチョ一本で、販売地域もホーチミン市近郊に絞り、出荷ベースで3年後には20億円を目指します。軌道に乗れば、ダナンやハノイへの販売地域拡大、ベトナムから海外への輸出も検討してきたいですね。

MIKAMI KENJI
General Director
代表取締役社長
三上賢治

1967年生まれ。大学卒業後1989年に湖池屋株式会社に入社。品質保証室、開発部長、マーケティング部長などを経て2016年5月よりKOIKEYA VIETNAMに勤務。ベトナム事業の立ち上げに携わり、2017年6月にGeneral Directorに就任。