今年で設立20周年を迎えた花王ベトナム。「ビオレ」や「メリーズ」など多くのヒット商品をベトナムで育ててきたが、「花王の存在感はまだまだ」と大場社長は語る。消費者への新しい提案がなければ、事業の価値はないと言う。

独自の付加価値を提案

代表取締役社長 大場恒雄

―― 1996年から事業を始めて、今年で20周年ですね。

大場 はい。お陰様で。弊社の工場はドンナイ省のアマタ工業団地ありますが、クライアント第1号と聞いています。ベトナムに進出したのは、長期的には成長市場でありアジア事業の柱になると考えたからで、中期的には主に輸出用の製造・生産拠点とするためです。

―― 売れ筋製品とは何でしょうか。

大場 種類は150以上ありますが、フラグシップブランドは4つです。発売順に言いますと、スキンケア洗顔料の「ビオレ」、生理用ナプキンの「ロリエ」、2014年に発売したのが洗剤「アタック」と、日本から輸入している紙おむつ「メリーズ」です。

花王のアジアの生産拠点はベトナムの他にタイ、インドネシア、台湾、中国があり、交互に輸出入をしています。ベトナムからは女性用洗顔料ビオレをアジア諸国へ、男性用はアジアと日本に輸出しています。また、メリーズは日本と同じ製品を輸入販売していますが、これはむしろレアケースです。

―― と言いますと?

大場 日本でヒットした商品が、そのまま他国で売れるとは限りません。花王は、家庭訪問調査をして、その国に合わせた商品開発を行っています。ただ、日本と全く違った商品になるわけではなく、同じ技術をベースにしながら、その国特有のアレンジを加えて開発します。

アタックを例にしますと、ベトナムで販売しているニオイ菌を99.9%除去するアタックデオドラントの基本技術は同じですが、日本は液体も品揃えしているのに対してベトナムでは粉末。また、香りはスズランと桜を基調にした2種類がありますが、どちらも日本にはないものです。

近年伸びているのは高付加価値製品のロリエです。昨年秋からはパンティライナーの新製品も販売しまして、売れ行きは好調です。

―― 日本製品は高品質で価格も高め。それでも売れ行きが良いと。

大場 ローカルの商品より高いかもしれませんが、他社製品の価格は参考にはしても、意識はしません。それよりも、独自の付加価値を持たせることを重視しており、発売前には念入りに各種の市場調査を行っています。

ベトナム市場で花王の存在感はまだまだ足りません。ビューティケア製品も洗剤も生理用品も、外資系やローカルの競合がひしめき合っています。だからこそ、弊社の伸びしろは大きいと感じていますが、そのために必要なのは消費者への新しい提案です。これができていないとベトナムで事業を行っている価値はないでしょう。

全国に届ける販売網を

ビオレシリーズのポスター

―― 赴任されて今年で6年目。市場の変化を教えてください。

大場 この5年の変化は、消費者の「クオリティ・オブ・ライフ」向上意識が際立ってきたことですね。増加する中間層と経済成長の担い手が若い世代であり、特に弊社のメインの購買層は女性。以前のベトナムの女性は欲しい対象がよくわかっていなかったようですが、最近は好き嫌いをはっきり主張して、生活の価値にこだわるようになりました。
 こうした顧客の生活もそうですが、社会インフラ、小売りの形態、競合他社の動向、企業人としてのあり方や有能な人材の動きなど、ベトナムはとにかく変化が早いので、毎日が勉強です。ベトナムを一言でいえば「成長活力旺盛」。これを支えるのが勤勉で勉強熱心、常に明るい向上心を持つベトナム人であり、経済はますます良くなると思います。

―― 日々心掛けていることは?

大場 良い事業を行うために現場で、肌感覚をつかむまで試行錯誤する、苦しむということです。統計を見たり、人づてに聞いたり、資料を読むだけで本質はつかめません。お客様に迫る、という感じでしょうか。以前は、立てた仮説が翌日にひっくり返るなどが当たり前でした。それは自分の未熟のせいですし、まあ、今でも変わりません(笑)。

以前は輸出と国内販売が半々の割合でしたが、現在では国内販売が圧倒的に成長しており、売り上げ全体も順調に伸びています。ただ、マーケットの成長以上に成長するのが最低ラインと考えているので、これからが勝負です。

―― 今後はどんな戦略を? 

大場 まずは、先の4つのブランドのラインナップを拡充させたいですね。ロリエからパンティライナーのような新しい高付加価値品を発売したように、ビオレであればベトナム初の温熱タイプ洗顔料(上の写真)の強化や、UVケア製品の普及拡大などが候補になります。

もう一つは販売網の拡大です。弊社の販売方法は、ハノイとホーチミン市はパパママショップなどのトラディショナルトレードも含めて自社で直販し、地方ではスーパーなどのモダントレードも直販です。それ以外の地方などは代理店に委託していますが、お届けできていないお店も全国に多くあります。特に地方のトラディショナルトレードを強化した、販売網の拡大を進めるつもりです。

KAO VIETNAM CO., LTD..
General Director 大場恒雄

1958年生まれ。大学卒業後に花王株式会社に入社。調査部に15年勤務し、マーケティングの事業本部、販売部を経て、インドネシアに社長として5年間赴任。帰任して事業本部長を務めた後、2010年5月より現職。

Related Posts

88 Lounge(エイティエイトラウンジ)予約必須の特別ビーフ料理をぜひ有名人もお忍びで訪れる隠れ家を発見

88 Lounge
(エイティエイトラウンジ)
予約必須の特別ビーフ料理をぜひ
有名人もお忍びで訪れる隠れ家を発見

ベトナムの希望と懸念2018年注目4業界

ベトナムの希望と懸念
2018年注目4業界

MORICO – Modern Japaneselifestyle restaurant cafe

MORICO – Modern Japanese
lifestyle restaurant cafe