5回の対談は、不正調査担当のSamanさんです。

小野瀬 「自社での多少の不正はやむを得ない」と考える日系企業もあるとよく聞きます。

Saman どの程度を多少と言うかは会社の判断ですが、多少という次元を超えている事例も多くあります。特に購買担当者が、仕入先からのキックバックをもらっている事例が散見されます。

小野瀬 不正調査にて、仕入先のマスターデータの不備や見積書の操作などの例が見つかるそうですね。

Saman 立場を利用して私腹を肥やしている事例は、残念ながら多くありますね。結果として、その会社は随分高い金額で仕入れることになります。この行為が購買担当者の習慣となってしまっている場合もありますよ。購買担当者が、不相応な資産を有していたり、そんな振る舞いをしている場合は要注意。また、内部通報が発端となって発覚するケースも多くあります。

小野瀬 日系企業の場合は、日本人管理者が実務を把握していない場合もあります。日本ではコンプライアンスが企業の社会的使命と声高に叫ばれている中、ベトナムでは対応に苦心されている会社が多いですね。

Saman 言葉や文化が違いますし、また担当者を信用したいという気持ちもあってか、購買部が不正の温床となり、会社に数千万円、数億円の損害を与えた事例もあります。従業員の私生活や言動には、十分気を配って下さい。不正の防止は、コスト削減にも大きく貢献します。不正が起きてから相談に来る場合が多いのですが、日本と同様にコンプライアンス重視の観点からも、そもそも不正を起こさせないための組織風土や社内体制の構築が必要になります。

小野瀬 貴久
Onose Takahisa
Ernst & Young Vietnamのホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、2006年からEYジャカルタ事務所、2011年よりEYベトナム・ホーチミン事務所に勤務。
ウェブサイト: www.ey.com