新潟から進出した精密部品メーカー、東和インダストリアル。独自の技術力で製品の幅を広げ、顧客を開拓、事業の拠点をベトナムにシフトしてきた。2012年には第3工場が竣工。設立20周年を迎えて渡邉社長が語る。

精密分野で事業を拡大

代表取締役社長 渡邉 豊

―― 多くの中小製造業がベトナムに進出する中、御社はその先駆けです。

渡邉 進出というより、工場を海外に移転するしかなかったんです(笑)。20年前はものすごい円高でしたから。最初は中国を考えましたが、独資で投資ができるのは電気の事情が悪い内陸部ばかりで、沿海地では投資額が10億円以上か合弁会社が必須。中国企業には製品をコピーされていたので、特に合弁では技術が盗まれると思い断念しました。

東南アジア諸国に視点を向けると、ドイモイ中のベトナムには他社も進出を始めていたし、国の目標が工業化なので、初期投資が少なくとも精密機械業なら歓迎してくれた。もちろんリスクもありましたから、決めたのは直感です。ベトナム人たちの人当たりが柔らかさも理由の一つでした。

―― 主力商品は工業ミシン内部のボビンケースで、世界トップシェアとか。

渡邉 その地位は進出時から変わっていませんが、当初はボビンケースが売上の6割、高精密製品が4割だったのが、今ではボビンケースが約35%と逆転しました。ボビンケースはいくつもの微細部品で構成されるので、組み立ては手作業です。最初はこうした人手で投資リスクを減らし、徐々にNC旋盤など高額設備を導入して、高精度部品を拡大するようになりました。

2006年に第2工場、2012年に第3工場を竣工しまして、これらでは主に自動車の油圧部品、新幹線用のブレーキ部品、建設機械や農業機械用の油圧バブルなどの重要保安部品を生産しています。ミクロン単位の高精度な生産技術と、品質管理力を量産で実現することが、弊社の強みだと思っています。

―― どのくらいの種類を作っているのですか?

渡邉 多すぎてすぐ出てこないな(笑)。ミシン用で約500種類、油圧系で700~800種類でしょうか。ボビンケースは自社ブランドですが、他の製品はお客さん仕様。指定された素材や図面で作るものの、当社から、何らかの提案をすることも多いですね。

受注先の多くは日本企業で、特に精密制御バルブなどの研究開発部門です。最初の1年はR&D機能がある日本本社が主導で進め、ある程度の形が見えたらベトナムの弊社で受け取ります。ベトナムでの生産が前提になっているのですが、以前は「ベトナムで作るのは大丈夫か」と言われたものです。実績を積んだ現在では、「早くベトナムに渡してほしい」というお客さんもいるほどです。図面を起こすなどの作業は既にベトナムで行っています。

加工精度で今後も挑戦

生産している精密部品の数々

2012年に竣工した第3工場

―― 従業員数も増えました。

渡邉 進出当初は約30人でしたが、第3工場ができた頃は全従業員で1000人を超えました。ただ、毎年上がり続ける人件費を抑えるため、生産性向上と効率化を図り、今は720人ほどです。不良品を出したら信用をなくしますから、製品に影響しないように細かく確認しながら進めました。

ベトナム人は学習意欲が高く、素直で、進出当初からとても助けられました。ただ、転職が多く、特に入社1年以内で辞める人が多い。そのため、社員が入れ替わっても安定して高品質の製品を提供できる生産システムを作るようになり、それが自社の強みになりました。

―― 撤退する企業も多い中、事業を拡大できた理由とは?

渡邉 中国市場の拡大と東南アジア諸国の成長サイクルに乗ったこと、円高で海外展開が有利に働いたことに加えて、事業をきめ細かく、丁寧に進めてきた結果でしょう。20年を掛けてベトナムに徐々に比重を移してきましたし、リスクを避けるために少しずつ事業を拡張して、長い期間を掛けて高額設備などに投資を続けてきました。

社内的にはベトナムのやり方を尊重して、日本式を押し付けなかったことでしょうか。生産や品質管理は日本式ですが、労務管理などではベトナムの習慣を大切にしました。

―― ここから輸出もしていますね。

渡邉 日本に送ったものが組み立てられて他国に輸出されるなどもありますが、出荷ベースで日本が約7割。他にはタイ、台湾、中国、インドネシア、ヨーロッパなどに輸出しています。最初の海外輸出は15年ほど前ですが、この5年でかなり増えました。ASEANに展開する企業が増加したためでしょう。

―― 今後の計画を教えてください。

渡邉 伸びしろがあるのは今以上の高精度への対応。例えば、クリーンディーゼルの燃料噴射装置などだと思います。現在も受注していますが、こうした加工精度と付加価値の高い製品に挑戦したい。また、人件費が上がり続けているので、うちでしかできない技術を拡大させたいですね。

TOWA Industrial (VIETNAM) Co.,Ltd.
CEO 渡邉 豊

1959年生まれ。大学卒業後に祖父が起業した株式会社東和製作所に入社。1995年にベトナムに進出し、同年に単独資本で東和ベトナムを設立。同時に代表取締役社長に就任。