コンシューマー製品の活躍で目立つ日系企業が多い中、優秀なB to B製品を提供する企業も数多い。一般的な知名度は低くても、産業を支える名脇役だ。そんな「知られざるB to B企業」の、実力と底力をぜひ知ってほしい。

 

四輪・二輪用や産業用のバッテリーで日本と世界でトップクラスのジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)。その子会社であるGSバッテリーベトナムは今年で進出20周年を迎えた。今後は「総合二次電池メーカー」を目指す。

二輪用で年800万個 四輪はシェア拡大へ

1997年にベトナムに進出し、1999年から日系新車メーカーに二輪用バッテリー(鉛蓄電池)の提供を始めたGSバッテリーベトナム。現在は南部ビンズン省のべトナムシンガポール工業団地(VSIP)に2工場を持ち、第1工場で四輪、第2工場で二輪用のバッテリーを生産している。

二輪用では、2社でベトナム市場の9割を占めるホンダとヤマハをはじめほぼすべての二輪メーカーに提供し、新車用バッテリーで国内シェアが約8割(同社調査2016年)。四輪用はトヨタを含め日系メーカー等に提供しており、新車用国内シェアは約2割(同)。四輪市場はチュオンハイなどローカルメーカーも多いが、彼らはバッテリーを価格で選ぶ傾向が強くなってきている。

工場の生産現場

こうしたBtoB市場以外に、ユーザーに直接販売するBtoC市場もある。商品寿命等で交換する補修用バッテリーで、ホーチミン市とハノイの支店で販売している。こちらの同社のシェアは二輪で約5割、四輪で約4割。競合はローカルの蓄電池メーカーや台湾系企業等の海外勢。前者は四輪用が、後者は二輪用がメインの商品だそうだ。

「二輪市場は2012年頃まで右肩上がりでしたが、その後新規登録台数が頭打ち、および減少し、2015年から持ち直しました。2017年第1四半期の新規登録台数は、前年同期比で8%程度の増加となるようです」

二輪はベトナムが輸出拠点にもなりつつあり、特に日系メーカーは輸出先でのアフターフォローも重視するため、欧米、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなどに生産・販売拠点のあるGSユアサの強みが生かせるという。

一方の四輪はインフラや駐車場の未整備など問題は多くあるものの、市場は勢いよく伸びており、同社もシェア拡大を目論む。価格重視のローカルメーカーに対してはコスト競争力を高める予定だ。また、輸入車の関税がゼロになる「2018年問題」に関しては、ベトナムでの生産を止める完成車メーカーはないと見ており、仮に減産となっても輸入増で保有台数が増えれば、補修用のニーズ増が期待できると語る。

「補修用は元のバッテリーと同じ商品を買う人が多く、また、お客の評価が高ければメーカーは新車用に採用したいと考えます。バッテリーにおいてBtoBとBtoCで別の市場ではなく、補完し合っていると思います」

同社の年間の生産個数は新車用と補修用を合わせて、二輪は約800万個、四輪は約60万個(2016年)。GSユアサグループは上記のように各国に生産・販売拠点があるが、ベトナムは二輪用バッテリーの生産個数が最も多い拠点のひとつだそうだ。

バッテリーは車種等によりサイズや性能が異なるが、同社は大きく分けて二輪で10種類、四輪で40種類ほどを生産。輸出に関しては四輪用では大きな変化はないが、二輪用は近年5%の伸びを維持している。

他分野にも多角展開 メーカーの信頼が品質

GSバッテリーベトナムは今、車載用バッテリー以外の製品も展開しつつある。

1つは2016年初から始めた電動車(電動フォークリフト)用電池と産業用電池の輸入・販売だ。電動車用はタイの工場から輸入した24個のバッテリーをアセンブリして販売。産業用とは携帯電話の基地局や工場のバックアップ電源などに使われる二次電池で、今年から輸入だけでなく生産もスタートする予定だ。

フォークリフト用バッテリー(左)
産業用バッテリー(右)

「これまでにない分野にも展開して、総合二次電池メーカーになりたいのです。電動フォークリフトは経済成長に加えて環境対策としても増えると思いますし、産業用電池はコスト面では厳しいですが裾野が広く、インフラとして伸びが見込めます」

将来はソーラーシステム事業も視野に入れている。その場合、主力の電池となるのは日本のGSユアサが生産している専用鉛電池あるいはリチウムイオン電池で、ベトナムで輸入・販売をしてゆくとのこと。

その他、リサイクルシステムへも積極的に参画し、電池の回収やリサイクルなどでベトナムの環境保全に努めたいという。

同社の優位性は日系の二輪・四輪メーカーの品質基準をクリアしている点と花野氏。こうしたメーカーの審査は厳しく、進出国でも日本の基準を求めるため、メーカーの信頼=サプライヤー製品の品質保証となるからだ。また、GSユアサは旧日本電池、旧ユアサ電池の設立から今年で100年であり、長期間のR&Dの蓄積がグループ内で共有できるという。

「確かにローカルの同業他社も成長していますが、弊社には安全・安心をリーズナブルな価格で提供してきた実績があります。これからも地道に続けようと思います」