コンシューマー製品の活躍で目立つ日系企業が多い中、優秀なB to B製品を提供する企業も数多い。一般的な知名度は低くても、産業を支える名脇役だ。そんな「知られざるB to B企業」の、実力と底力をぜひ知ってほしい。

 

製造現場の環境改善に適した、産業用の送風機やミストコレクターを製造する昭和電機。海外初拠点として2012年にタイに進出した。ベトナムには複数の有力な公式ディーラーを配置し、スピーディな対応を実現している。

タイからASEANへ 1台からの受注生産

2012年にタイに設立された昭和電機(タイランド)。日本で納品した製品が知らない間に海外で使われており、海外工場でのニーズに気付いたという。当初は製品の販売のみだったが、現在は工場の環境改善を求める顧客に対応し、周辺機器と組み合わせたソリューションがメインとなっている。顧客の使用環境に合わせた受注生産が昭和電機の特徴だ。

ダストレーサCFAタイプ

「主力商品である送風機、ミストコレクター、集塵機に加えて、最近では防爆仕様やステンレス仕様の製品も多く受注しています。タイのお客様は特に自動車関係の製造業が多いですね」

顧客企業は日系4割、ローカル企業6割。タイを拠点にASEAN各国にも販路を広げており、ベトナム、マレーシア、インドネシアに注力している。同社製品のカタログも13ヶ国語で作成されていて、「自国の言語のカタログがあることをユーザー様は非常に喜ばれます」。海外比率は年々上昇し、現在では製品の約6割は海外で使用されているそうだ。

人気商品はいくつかあるが、一つは工場内の熱気対策で冷却や循環などを行う電動送風機「ウインドレーサー」。また、工作機械等から発生するミスト(オイルミスト)を捕集するミストコレクター「ミストレーサ」は発売から20年。技術の集大成として今年1月には全世界向けの新シリーズ「CRMタイプ」を発売した。ミストの回収方法やオイルミストコレクターの設置方法など60種類の組合せから、顧客は自由に機種を選べるようになっている。

送風機の組み立て作業

「弊社の製品は標準ラインナップ以外はすべてセミオーダーの受注生産で、1台から製作しています。お客様に合わせた製品を弊社からご提案するというスタイルがほとんどで、スピード納期を心掛けています」

短納期の理由は、「一人一個生産方式」という同社独自の多品種少量生産体制。製品の加工、組立、検査、包装の工程を1人で1個ずつ担当する方法で、標準品の生産にかかるリードタイムが半分以下になったという。

同社の技術力には定評があり、送風機等のモーターは自社開発の「トップランナーモーター」。世界基準である省エネ基準を満たしたモーターであり、こちらも「一人一個生産方式」で1台から納品できるそうだ。

ベトナムで本格展開 変わる現場意識

ベトナムで人気なのは上記のウインドレーサー、ミストレーサに加えて集塵機の「ダストレーサ」。顧客の多くは四輪・二輪の部品メーカーという。スピード対応はここでも同じで、ハノイとホーチミン市に複数の有力な公式ディーラーを配置し、ハノイでは主力製品を保税倉庫で保管。日本とタイからの24時間サポートも行っている。

公式ディーラーについてはスタッフを日本の工場に招待し、定期的に技術講習を実施。これにより、日本でしかできなかった修理などがベトナムで対応可能となった。また、日本本社には日本語が話せるベトナム人スタッフがおり、ベトナムから掛けられる携帯電話を常に持っているそうだ。

ウインドレーサー

「ベトナムでは作業者の方のマインドが変化しつつあり、特に作業環境への意識が高まっています。日系の工場でも、ベトナム人スタッフの方々が自発的に弊社製品を選び、上長に提案するなどが増えています」

周辺機器と組み合わせたソリューションを昭和電機では「ちょこっとエンジニアリング」と呼び、顧客からも好評だ。ベトナムではこんな例もあった。ウインドレーサーを設置した後の風の流れなど、その効果を気流解析ソフトで説明し、工場全体に設置することでの改善点を視覚的に理解してもらったのだ。

「安心して納入していただきました。アジア諸国では、まだまだ作業場の環境改善に取り組んでいる工場が少ないのが現状です。品質よりも安い価格での購入を求めるお客様も多く、『日本製でハイクオリティー』だけでは難しい点もありますね」

今後は日本国内で規制が厳しくなっている「有機溶剤のリスクアセスメント」の局所排気について、海外でも取り組んでいく予定。海外事業は拡大させる計画であり、同社製品を使用した海外の日系企業が、それを持ち帰って日本国内でも使ってもらえるようにしたいと語る。

「ベトナムは『これから!』というのが現状で、製造業に関わる全ての方が、潜在的なお客様であると考えています。製品の販売だけではなく工場内など作業場の改善に、最適なご提案をできるようにしていきます」