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供給増にも関わらず売れ続けるベトナムの住宅不動産。日系を含めた外資系企業の参入も顕著だ。昨年7月の住宅法改正で、外国人の購入者も急増している。これはバブルなのか?市場拡大はどこまで続くのか? 各業界の専門家たちが現在と未来を語る。

 
 

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東南アジア5ヶ国で不動産投資を行うクリードグループ。ベトナムには2014年に進出し、B、Cクラスのコンドミニアムで合計4つのプロジェクトを開発する。主にベトナム人に住宅物件を提供しており、実需に基づく市場は底堅いという。

 

実需が求める中間層のニーズ

「投資する国で一番良好なのがベトナム。次がバングラデシュ、ミャンマーと続き、カンボジアとマレーシアは調整期でしょう。ハノイとホーチミン市の不動産には割安感があり、成長の余地がまだまだあると思います」

クリードグループが最初に手掛けたのは、ホーチミン市8区の「City Gate Towers」。いわゆるCクラスの高層コンドミニアムで約1100戸。来年5月に竣工予定で完成はまだだが、完売。2番目がホーチミン市7区の「ANGIA SKYLINE」の約450戸と、「ANGIA RIVERSIDE」の約250戸。どちらもBクラスの高層コンドミニアムで、前者は来年10月、後者は来年5月に竣工予定で、どちらも完売した。

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City Gate Towers

現在進めているのが大型複合施設の「River City」。ホーチミン市7区の約7000戸で、2020年竣工予定だが、今年5月から販売し、既に500戸が売れたという。現在までの総投資コミット額は約3億USDに上る。

特に海外のデベロッパーは投資用にAクラス物件を開発することが多いが、同社は購入者が実際に住むための実需用がメインで、購入者の95%がベトナム人だという。Cクラスだと実需用と投資用の割合が8:2~9:1、Bクラスで7:3と実需用が主となるが、Aクラスの高級物件では3:7と逆転し、1:9などもあるそうだ。

「2008年の不動産バブル崩壊後、2012年頃まではデベロッパーが住宅を供給できず、金利も高かった。しかし、経済は成長して世帯年収は上がり、住宅需要は増えていった。それが2014年に爆発して不動産市場が急伸したのでしょう。昨年ほどの勢いはないものの、今年も需要は底堅いです」

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ANGIA SKYLINE

購入者は3世代家族から若夫婦などへと核家族化が進んでいるようで、その中心は30代半ばの中間層の夫婦。同社のターゲットは共働きで世帯年収が1万6000~2万USD程度という。家族や親戚から資金を集める人もいれば、長くて15年程度の住宅ローンを組む人もいる。

同社の物件の売れ筋は70㎡であり、Cクラスなら約800USD/㎡なので5万6000USD、Bクラスなら約1300USD/㎡なので10万USD程度となる。仮に10万USDなら5万USDを現金、5万USDをローンなどで支払うベトナム人が多いという。

「日本の高度成長期に近い感じだと思います。経済が成長しており、これから給与が上がるという確信があって、家や車が欲しいという願望が強い」

住宅ローンの整備が成長を加速

投資用に購入する外国人も増加している。東南アジアで比較した場合、マレーシア、タイ、インドネシアなどは経済が停滞気味で、不動産価格もベトナムほど安くはない。ベトナムは自然と海外投資家に注目されているという。地域別に見るとハノイは比較的高級で投資用の物件が多く、ホーチミン市ではA~Cクラスが満遍なくあり、住宅用の実需が多いという。

「外国人購入者で多いのはシンガポールやマレーシアの華僑だと思います。これからは中国本土の中国人、韓国人、日本人などが増えてくるでしょう」

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ANGIA RIVERSIDE

今の不動産市場は「バブル」かという問いに、山口氏は「そうではないと思う」。価格は上昇しているとはいえ急騰というわけではなく、実需に基づいたニーズで売られているからだ。ただ、大都市の中心部には超高級物件も登場し、少々供給過剰になっていることから、バブルに入りかけている懸念はあると語る。

「ただ、経済成長率が7%弱、国民の平均年齢が20代後半などを考慮すれば、しばらくは堅調に進むでしょう。来年、再来年から需要が少し落ちるとは思いますが、住宅ローンが一般化すれば購入者は急増すると思います」

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River City

彼の言う住宅ローンとは銀行単位での融資というより、日本の住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のように、政府や公的機関が住宅用の低金利ローンをサポートするものだ。ここ1~2年での実現は難しく、最低で5年程度はかかりそうだが、住宅はインフラでもあるので将来的に始まるだろうと見ている。

最後に、不動産の購入を考えている日本人へのアドバイスを聞いた。

まず、物件の選択肢が多いので、現地に足を運んで実際に見ること。また、契約する相手が信用できるかどうか見極めることだそうだ。昨年から購入できるようになったので、完成した物件を受け取った外国人はまだ少ない。来年から次第に増えていくだろうが、そこでの心配事もあるという。

「登記に必要となる書類、ピンクブック(所有権が明記された書面)の内容、税金の額や支払い方法などがはっきりわかりません。何らかの問題が来年、再来年に起こるかもしれませんが、解決できるとも考えています」