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供給増にも関わらず売れ続けるベトナムの住宅不動産。日系を含めた外資系企業の参入も顕著だ。昨年7月の住宅法改正で、外国人の購入者も急増している。これはバブルなのか?市場拡大はどこまで続くのか? 各業界の専門家たちが現在と未来を語る。

 
 

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繊維・縫製業で事業を拡大し、メディアと不動産の分野に進出した地場のソンキムグループ。不動産事業を担うソンキムランドはオフィスビルにリゾート、レジデンシャルの高級物件を中心に開発し、新ライフスタイルの提供を戦略とする。

 

求められるハイクオリティ

ホーチミン市2区のタオディエンは特に欧米人に人気で、中心部へのアクセスも良い地域。ここでソンキムランドがHamon Developmentsと提携開発を始めたのが、高級コンドミニアムの「GATEWAY THAO DIEN」だ。2017年第4四半期に完成予定で、昨年5月に販売を始めたが、既に80%以上が売れている。

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GATEWAY THAO DIEN

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GATEWAY THAO DIENの室内例

また、同じタオディエン地区の「THE NASSIM」は香港のHongkong Landとの提携によるもので、不動産調査会社に「この4年間で初めてのラグジュアリープロジェクト」と評された物件。2018年第2四半期に完成予定で、昨年10月に販売を開始し、約85%が売れた。

両プロジェクトの特徴は、著名な海外デベロッパーと組んでいること、前者が540戸、後者が238戸と戸数が少ないこと、前者が平均2500USD/㎡、後者が3000USD/㎡という高級物件であること。そして、どちらも全戸数の30%までという1棟当たりの「外国人枠」内で、THE NASSIMは30%、GATEWAY THAO DIENはほぼ30%が売り切れていることだ。

「弊社のターゲットはベトナムの高所得者、外国人、僑越(海外在住のベトナム人)です。他の大規模デベロッパーのように何千戸と供給しないのは、細かなケアなどのマネジメントできなくなるから。それはラグジュアリーではありません。また、建設やデザインに時間とお金を掛けていることも特徴です。すぐに作ってすぐに売る企業とは異なります」

今年10月には、ホーチミン市3区で「SERENITY Sky Villa」を販売予定。2階建ての室内に吹き抜けのスペースを作るなど、新しいコンセプトのビラ風高級メゾネットタイプだ。全45戸の限定で各総面積は各180㎡と広いが、5000USD/㎡と値段も破格だ。

これらAクラスの物件に注力したのは、ベトナム経済が成長して高所得者が増えると同時に、外資系企業の進出に伴って多くの外国人が来越すると見越したから。彼ら向けの物件で最も大切なのは「ロケーション」と考えており、そのためにタオディエンのような好立地の土地を購入したという。

「外国人はもっと増える。日本人のあなたや韓国人の私がここにいるようにね。THE NASSIMを例にすれば、1番多い外国人購入者がシンガポール人、2番目が韓国人、3番目が台湾人。香港人も多いのだけど、価格を見せたら、『うちの駐車場と同じ値段じゃないか』と即決です(笑)。海外から物件を見ずに何戸も買う人もいて、それだけベトナムの不動産はお買い得なのです」

僑越とTPPがハイエンド市場を拡大

購入者の多くは富裕層のビジネスオーナー。投資用と住宅用に分かれるが、多くの人は考慮している段階ではないかという。

なぜなら、メトロ(1号線)が完成すれば利便性が格段に上がるからだ。3~4ベッドルームなら家族で住みたがる人も多くなるだろし、1~2ベッドルームなら半分程度の人はリースするのではないかと見る。

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THE NASSIM

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THE NASSIMの室内例

また、現在のリースによる表面利回りは7~8%と順調で、昨年から今年にかけて2区の地価が40%ほど上がったという。また、メトロが走るころには価格はより上昇しているだろうから、転売にもいい時期だそうだ。

「日本の不動産バブルが崩壊した原因は、人々が銀行から簡単にお金を借りられたのと、需要に供給が追い付かなかったためではないでしょうか。ベトナムでは国民の所得が上がり、外国人が増加し、ニーズの高まりに合わせて供給も増えている。バブルとは思いません」

今後の市場を好調にするカギは僑越とTPPだとハン氏は予測する。カナダ、アメリカ、オーストラリアなどに住む僑越の富裕層が、母国の不動産に注目して購入者が増えるとのこと。

また、TPPの発効に向けて現在進出しているサムスン、LG、ノキアのような大手企業が投資を始めるだろうから、外国人がますます増える。彼らは住居、環境、学校、施設などに高い品質を求めるので、ベトナムのハイエンドマーケットは今後も伸びると予測する。

問題は最大で30%という外国人枠だが、最長で50年の長期に渡る賃貸借契約を締結する形態で、コンドミニアムなどを購入する外国人もいるという。こうした契約でも転売はできるので、実際に持つのと変わらなくなるが、あくまで所有権はない。

「デベロッパーとしては今の上限である30%を40%、50%となるよう働きかけますし、実際に率は上がると思いますが、すぐというわけにはいかないでしょう」

今後は日本の大手デベロッパーと組んで、ホーチミン市2区のトゥーティエム地域で大型プロジェクトを始める予定だ。同社のフラグシップモデルとなるような、コンドミニアムとオフィスを融合させたラグジュアリー物件になるという。