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ベトナムの法律は一筋縄ではいかない。
日本と異なる法体系や頻繁な法改正があるからだ。
頼りになるのは法律事務所や会計事務所だが、敷居が高いと感じる人も…。
そこでSKETCHPROが協力。
日系企業が困りがちな具体例を作り、各専門家に回答をいただいた。

執筆ご担当(50音順)
AGS / DFDL Vietnam / EY ベトナム / TMI総合法律事務所
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 / 長島・大野・常松法律事務所
 
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Q. 契約している企業が異なる製品を納入し、「言われた通りに作った」と非を認めません。最近は製品の質が落ちているので、今回は依頼した製品をきちんと納入してもらい、次回からは契約を打ち切りたい。うまく進める方法はありますか?

A. 対応策は段階的に考えましょう
まず、「今回分の製品を適切に納入させる方法」から考えましょう。最も平和的な手段は、契約通りの製品の納入を重ねて催促することですが、相手方の態度や経緯からすると効果の見込みは薄いですね。

そこで次のステップとしては、言葉は悪いですが「威嚇」が挙げられます。例えば、「当方は法的手段に訴える用意がある」等の書面を、場合によっては弁護士名義で送ることで、相手方が折れてくるかもしれません。

そこまでしても自発的な納入がない場合はどうすべきか。実際に訴訟等を起こすという選択肢もありますが、時間やコストに見合う利益の回収を期待できるかという視点からは、現実的とは言いにくいです。そのため、同等かそれ以上の製品を他社から迅速に調達できるのであれば、当該企業からの入手をあきらめ、他社製品に切り替えるという代替案も検討に値します。

次に「契約解除の方法」です。「どういった場合に解除できるか」や「解除に必要な手続き」は、貴社と相手方との取引契約書に定められているはずです。通常は「相手方の債務不履行による解除」といった条文が置かれているため、それに従って、「債務不履行の具体的理由」(納入された製品の種類・品質と契約内容との相違等)を相手方に指摘しつつ、解除通知を送付することになります。

ただし、契約書の中身をきちんと作り込んでおかないと、何が債務不履行なのかといった「解除の根拠」を説得力ある形で説明することが難しくなり、逆に相手方が「解除は無効」と主張して、代金を請求してくる等の事態を招きかねません。紛争の長期化・泥沼化を避けるためには、契約書作成の段階から、弁護士等の法律の専門家に相談したほうが安全でしょう。

回答者 : アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 八巻 優