日系大手ITベンダー ベトナムを攻略
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ベトナムではIT産業が急伸している。近年ではオフショア開発にとどまらず、ITを活用した他業種への展開やインフラ作りなど、より大きなビジネスを進めている。日系大手ITベンダーの戦略を探る。
スマホとセンサーで農業支援
工業国を目指すベトナムは、様々な農作物を生産する農業国でもある。ただ、安全な品質、安定した供給、生産性の向上など課題は多く、その解決にITを用いたトライアルを続けているのが富士通だ。例えば、富士通、富士通ベトナム、イオンアグリ創造の3社は、JICAの支援を受けて今年の1~3月、ハノイ近郊ハナム省の農場で実証実験を行った。
約1000㎡の試験場でニンジン、オクラ、チンゲン菜などを育て、農作業履歴、生育状況、気象・土壌データを記録し、富士通のデータセンターで集約して可視化させる。イオンアグリ創造はその内容に基づいて農作業を指導する流れだ。
農作業履歴は現地の農作業者がスマートフォンから専用のアプリを使い、農場に設置された各種デバイス、センサーの情報を読み込む。農作業者氏名、農場区画、種まき、散水、施肥など作業内容タグの中から適切なものを選んで、スマートフォンをかざすだけで送信できるという。
生育状況も同様のアプリを使用し、丈の長さ、葉の数、実の数、病害虫の発生状況などを撮影したり、コメントを付けて送信する。気象や土壌のデータは農場に設置された各センサーにより収集され、気象は温度、湿度、雨量、日照量など、土壌は土中水分量、土中温度、電解質などの情報が1日数回、リアルタイムに送られる。
「農場の規模は小さいものの、期待通りの情報が集まっています。データを送る先は日本のクラウドですが、データ通信量がさほど多くないため、ベトナムのインターネット環境でも支障ありません」
最も重要となるのは、いつ、だれが、どこで、何の農薬を、どのくらい入れたかといった、「作業履歴の管理」だという。ITに不慣れな農家が多いので、最初は日本人農業関係者が使い方を教えるが、ベトナム人に限らず、どうしても次第に作業がおざなりになってしまう。
「それが結局、最終的な品質を落としてしまうのです。次のステップでは、少しずつでも、市場に受け入れられる品と種類を揃えたいですね」
また、ベトナムでは農産物の流通も独特で、自分の農作物の売買価格を知らない農家がほとんど。そこで今回の結果を元に、将来的には新たなフードバリューチェーンを実現したいという。
今後拡大必至の市場を見込む
ITの利用をユーザー目線で実現した事例としては、昨年1~12月にフエ省の村で行われた、住民参加型防災システムの有効性調査がある。河川の氾濫・洪水対策のため、先進国では水位の上昇をセンサーで監視するなどしているが、機器やシステムをゼロから設置するには予算も時間もかかる。
そこで、選ばれた住民(防災員)6名が、各区内の河川水位の計測地点で1日2回、雨量の計測地点で1日4回、目視で測定。配布したスマートフォンの専用アプリから、測定値、撮影した現場写真、コメントを送信する取り組みを行った。各計測地点にはわかりやすい測定盤などを設置し、位置情報と測定時刻は自動的に通知される。
防災員からの情報は富士通のデータセンター内に保存され、リアルタイムでフエ省の地図上へのマッピング、水位変化の速度がわかるグラフが作成され、農業農村開発局へも提供される。同局の防災担当者はWebでこれらの情報を監視し、必要があれば避難指示に活用するという仕組みだ。データが長期間蓄積されれば、洪水の予測分析なども期待できる。
「防災対策をはじめ社会インフラは国の発展段階によって異なるもの。スマートフォンでの写真撮影や簡単なコメントの送信は、人力での社会インフラとして十分に活用できると感じました」
富士通では、モノからサービスやアプリといったソリューション事業へのシフトを進めており、ベトナムでも同様という。
同社はこれまで、サーバーやストレージといったハードウェアを、パートナーを介して政府機関、そして民間企業などに納入してきた。これが売上の約7割、残り3割がソリューション事業であり、上記のような公的なIT支援と民間ニーズが今後高まると見ている。
民需は日系製造業を中心としたパッケージソリューションの提供などで、最近ではエースコックと組んだ効率的な共同物流情報システムの構築が話題となっている。
「ベトナム国内のIT市場は約5.7億USDと言われており、まだ小さいのですが、経済成長と共にもっと拡大するはず。そのために今からソリューション事業を強化しています。富士通のノウハウや知見を盛り込んで、他社を寄せ付けない競争力を付けたいですね」
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