日系大手ITベンダー ベトナムを攻略
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ベトナムではIT産業が急伸している。近年ではオフショア開発にとどまらず、ITを活用した他業種への展開やインフラ作りなど、より大きなビジネスを進めている。日系大手ITベンダーの戦略を探る。
米、中に続いてベトナムへ進出
今年3月、サイボウズベトナムがホーチミン市の開発拠点をセンターポイント・ビルに移転し、開所式では日本本社の青野社長がベトナムへの意気込みを語った。セミナールームを持つ広いオフィスに移った目的は、開発エンジニアの増強を見据えてと、世界販売を狙うクラウド型データベースのミドルウェア、「kintone」(キントーン)の販売支援のためだ。
日本で大学院修了後にサイボウズに入社し、2009年のサイボウズベトナム設立にも携わったMs. Trieuと、ASEANでの拡販を担当するサイボウズの鈴木氏はこう語る。
「kintoneは2011年のリリース以来順調に伸びており、日本で約4000社、中国で約200社の企業に使われています。ベトナムでも日系企業を中心に販路を拡大中で、サイボウズベトナムも新機能の開発などで協力しています」(鈴木氏)
サイボウズというとグループウェア、特にスケジュール管理ソフトで知られるが、欧米ではスケジュールを社内で公開・共有する習慣がないため、これらの国へは強みが生かせない。実際にサイボウズは一度アメリカに進出したものの、最終的に撤退したことがある。一方、契約管理や顧客管理、不良品管理などができ、各国・各社専用のアプリを自由に作成できるkintoneであれば、欧米を含めた全世界への展開も期待できる。
既にサイボウズは動き出しており、アメリカと中国に販売拠点を設立し、ASEANではベトナムの他にタイ、シンガポール、インドネシアでも拡販を進めている。
アジアでは国ごとに文化や慣習が異なるため、現地の有力なパートナー企業が代理店となっており、ベトナムではオフショア開発のインディビジュアルシステムズが現地仕様の設定や販売を担当している。
「昨年からkintoneのアジアでの販売を加速させていて、今後はフィリピンでも活動開始予定です。ただ、最も注力しているのは開発拠点があり、日系企業も多いベトナムです。本社の日本人スタッフも、親日的で感覚が合うと言っています。ベトナムでの目標は年内に100社の導入です」(鈴木氏)
再度アメリカに進出した理由は、現地での市場開拓はあるものの、ブランド力を高める目的も大きいという。アメリカでkintoneが話題となり、認知度が向上すれば、それはグローバルに広がっていく。世界展開の強力なアシストになるという戦略だ。
年内に50人体制へ
サイボウズでは現在、日本、ベトナム、上海の3つが開発拠点であり、サイボウズベトナムでは主力製品の一つである「Garoon」の他、マイクロソフトの協業による「SP Apps」などを開発し、「kintone」では顧客に合わせたシステムインテグレーションなどをしている。社員はMs. Trieu以下、全員がベトナム人だ。
こうした海外拠点は日本本社の下請け的な役割となる場合も多いが、同社や上海支社は日本と同レベルでの協力関係にあり、Garoonなら各拠点が機能別に開発を担い、SP Appsではサイボウズベトナムが現在単独で開発しているという。コーディングだけでなく仕様書の作成も行っている。
「拠点間でのクロスレビューなどもしており、弊社のベトナム人社員が日本のエンジニアに研修するなどもありますね。日本のメンバーの技術力に負けないレベルであると思います」(Ms.Trieu)
ほとんどのスタッフが英語を解するので、ネットから最新の技術書を読んだり、社内で勉強会を開くなどして、技術をアップデートしているそうだ。Ms. Trieuによれば、ベトナムの若いエンジニアの多くが望むのが、「世界を知って、スキルアップすること」。外資系企業や、ローカル企業でも外国人と働くチャンスのある会社、海外への出張やオンサイトで外国人と交流できる会社を希望するという。こう語る彼女も、最新技術を学びたいと日本に留学した一人だ。
サイボウズベトナムの社員は現在33名だが、年内に50名まで増員する予定。青野社長も開所式で、「日本や上海の拠点もエンジニアを増やす予定だが、特にホーチミン市の拠点には期待している」と語った。理由は開発案件の増加であり、Ms. Trieuもエンジニアの層を厚くしていきたいという。
「今まではWebアプリの開発がメインでしたが、今後はモバイルアプリやkintoneなど、関わる製品の幅を広げたいと思っています。また、kintoneの導入先は主に日系企業ですが、タイミングを見て欧米の外資系企業やローカル企業にも広げていきたいです」(Ms.Trieu)
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