日系大手ITベンダー ベトナムを攻略
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ベトナムではIT産業が急伸している。近年ではオフショア開発にとどまらず、ITを活用した他業種への展開やインフラ作りなど、より大きなビジネスを進めている。日系大手ITベンダーの戦略を探る。
総合的に提供するソリューション
国際ネットワークサービス「Arcstar Universal One」で世界160ヶ国をカバーしているNTTコミュニケーションズ。ベトナムはNTTコミュニケーションズ(ベトナム)が担っているが、通信キャリアの参入規制があるため、ローカル通信大手のVNPT(ベトナム郵電公社)などと提携しながら国際・国内ネットワークサービスを提供している。
同社の特徴は、海底ケーブル、データセンターなどのインフラから、メール、クラウドなどのサービス、システムインテグレーション、そして保守、運用のアウトソースまでをカバーしている、単に回線やハードウェアだけではないソリューションの提供だ。
ハノイとホーチミン市のデータセンターは、どちらも国際標準規格のTier 3を持ち、システムの一部に障害が起きてもシステム全体の機能を維持する冗長化が、万遍なくなされているという。わかりやすく言えば、「落ちないネットワーク」だ。当然だが、24時間365日稼働している。
「特にハノイのデータセンターはオペレーションもNTTコミュニケーションズの基準で行われており、日本からの監査も入ります。ベトナムでここまで高品質なデータセンターはないと思います」
ここはベトナム最大手の通信キャリアVNPTグループとNTTコミュニケーションズが2009年に設立した、Global Data Service(GDS)が運営している。コロケーション、コネクティビティなどのデータセンターサービスに加えて、顧客の要望に応じてリソースを最適化した、クラウドサービスも提供している。
例えばオフィスや工場においては、サーバー、パソコン、LAN、電話やビデオ会議システムに加え、ICカード、監視カメラ、指紋認証システムなどのセキュリティシステムや業務アプリも構築。国内拠点、海外拠点を結ぶ国内・国際ネットワークサービスを行う。これらを安定的に運用するためのメンテナンスや監視サービスなどを含めて、トータルでのシステムインテグレーションを行っているというわけだ。
ただ、当初から全てを導入する企業は稀だそうだ。進出当時は少人数体制も多いのでインターネットとパソコン等で済ませ、スタッフが100人、1000人と増えるにつれて増強していく。例えば、給与計算をエクセルから業務アプリに変え、サーバーの容量変更に柔軟に対応するためにクラウドに移行し、セキュリティ強化のために監視カメラを付けるなどだ。
「通信キャリアでありSI企業だからできるサービスだと思います。お客様は全国に約300社あり、約9割が日系企業。ローカルや欧米系の通信キャリアには、弊社のようなサービスはないと思います」
「トラブルなし」が我々の仕事
ローカル通信キャリアは、通信回線の提供が主な業務であり、ソリューションというよりプロダクト販売に近いという。また、欧米系大手通信キャリアも進出してはいるものの、世界をカバーするための拠点はあっても、市場規模の小ささからベトナムを投資先として見ていないと長谷川氏は語る。
NTTコミュニケーションズ(ベトナム)の主な顧客は日系製造業。ベトナムへの進出企業は日本の他、韓国、中国、台湾、タイなどベトナムの近隣諸国が多い。
「ベトナムから遠いため欧米の製造業の進出は少なく、自国の進出企業をサポートする通信キャリアのソリューションビジネスは生まれにくいのでしょう。弊社の進出は2001年ですが、その理由は世界展開の拠点作りに加えて、日本のお客様の進出先でのサポートがありました」
南北での顧客の違いは、北部には工業製品の製造業が多く、南部ではその中に縫製、食品加工が散見されると共に、流通、小売り、金融などサービス業が増加中という。
また、顧客は日本で名の知られた大手ばかりでなく、海外に数多くの拠点を持つB to B型の部品・素材メーカーや、地方の有力企業などが多いそうだ。最近では、オフショアでソフト開発やBPO(業務プロセスの外部委託)を受託する、IT企業も増えているいという。
今後も日系企業を中心にインフラなどのIT環境を提供するが、変化の激しいベトナムでは、素早い対応を心掛けているそうだ。
「規制があるので大きくは動けませんが、トレンドやお客様の要望に合わせて提案を変えています。サーバー構築ではなくクラウドサービスを紹介するなど、アプローチを変えることもあります。また、トラブルを起こさないのが我々の仕事であり、お客様もそう感じていると思います」
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