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ユーザーが激増するベトナムの配車アプリ。世界でシェアを広げるUberやGrabが2014年に進出すると、昨年市場が急拡大。地場企業の参入も相次いだ。世界で、ベトナムで、今年も勢いが加速している。ベトナムのローカルアプリに絞って取材した。

 

 

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画面に浮かんだ複数のアイコンから、料金が一番安いタクシーを選ぶ。そんなオークション型の配車アプリが「iMove」だ。昨年8月の発表から準備を進め、ようやく7月からスタート予定。キーワードは「フェア」と創業者は語る。

 

各社が自由に価格を設定

配車アプリの料金は1㎞1万VNDなどと決まっているのが普通だが、複数のタクシー会社と提携して、各社に自由に価格を設定してもらう仕組みが「iMove」の特徴だ。つまり顧客は、競い合う価格の中から「最安値」のタクシーを選べるようになる。

アプリの画面には半径2㎞以内にいるタクシーがアイコンで表示され、最も安い料金のタクシーは点滅で強調される。アイコンにはタクシー会社の名前が記載され、タップするとID、何人乗りかのシート数、ドライバーの名前や電話番号などが表示される。必ずしも金額だけでなく、総合評価で選べる自由度の高さが、このアプリの最大のメリットだろう。

「タクシー会社には毎日、単価をアップデートしてもらいます。1㎞が1万2000VNDでも6000VNDでも構いません。ユーザーからはタクシー料金の、オークションのように見えるかもしれませんね」

通常、アプリで配車した場合でもタクシー会社はメーターの料金となるが、アプリで計算した料金を支払金額とするのが、同社との提携の条件になっているそうだ。また、アプリには観光地、レストラン、カフェ、銀行、病院などの一覧もあり、これらの場所への金額などを調べることもできる。

「私も家族もよくタクシーを使いますが、そこで不安になるのは、ドライバーが回り道をしないか、正しい道を走っているかということです。特に海外ではそう感じますし、逆にトリップアドバイザーなどにベトナムを旅行した外国人の、『タクシーに遠回りされた』といった書き込みを見ると悲しくなります。こうしたことをなくしたいと思いました」

同社の利益は実際の運賃の5%。例えばそれが6万VNDであれば、アプリには5%分をプラスした6万3000VNDが表示されて、ユーザーの支払金額となる。このうち3000VNDが同社の手数料となり、タクシー会社などから後日入金される。ユーザーの支払方法はキャッシュだが、クレジットカードが使えるように銀行と提携を進めているという。

「一般的にタクシーは大手企業のほうが有利ですが、iMoveでは全てのタクシーがお客に公平にアプローチできます。知名度やブランドだけでない、多くの条件からタクシーを選んでもらえるこのシステムは、ユーザーだけでなくタクシー会社にもフェアなツールです」

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7月から開始事業化は来年初

同社のパートナーはタクシー会社の他に、個人と自営業者が加盟するタクシー協同組合と、一般の個人パートナーが含まれる。個人でのパートナーは今はほとんどいないが、現在はハノイでタクシー会社500台、ホーチミン市でタクシー会社300台と協同組合100台、ダナンでタクシー会社100台と協同組合50台、合計1000台ほどと提携している。

「スマホ、PC、タブレットから配車できる他、提携したタクシーを止めて、ドライバーに目的地を教え、アプリで料金を提示してもらうことも考えています。そのため、協力車両にはiMoveのステッカーを貼ってもらう予定です」

iMoveは昨年8月にリリースされたが、検討事項が多かったために機能追加などの修正を加えて、今年5月にApp Storeで正式に公開した。約1000台のパートナーとは提携が完了しており、ようやく7月からビジネスをスタートさせるという。

ただ、当初は5%の手数料は取らず、まずはユーザーとパートナーにアプリを使ってもらう予定だ。現在は大手を含めたタクシー会社と交渉するなどパートナーを増やしている段階で、徐々に利用者を広げて、今年末までに全国で提携タクシー会社を5000台、個人パートナーを1000台にすることを目指す。

その後、2017年初から手数料を加えた本格的な事業化を始めて、来年末にはタクシー会社を1万5000台、個人パートナーを5000台にする計画である。

「手数料を運賃の5%とする以外、特に地方では1回につき3000VNDや5000VNDといった定額が好まれるという意見もあり、思案している最中です」

他国では配車アプリが市場を席巻した結果、タクシー会社のドライバーが退職して、個人で配車アプリに登録するなどの問題も起きている。アメリカとフランスの物流会社で約20年働いてきたMr. Haoは、「タクシー会社の財産は車両ではなく人材」と語り、iMoveなら人材も料金もタクシー会社が自社で管理できるという。

「2017年末までには、バイクタクシーと荷物の配送も始めたいと思っています。配送では培ってきた物流業界での経験とネットワークを活かせると思います」