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ユーザーが激増するベトナムの配車アプリ。世界でシェアを広げるUberやGrabが2014年に進出すると、昨年市場が急拡大。地場企業の参入も相次いだ。世界で、ベトナムで、今年も勢いが加速している。ベトナムのローカルアプリに絞って取材した。

 

 

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物流業界にも配車アプリ、すなわち配送アプリが拡大中だ。ベトナムでの先行者となったのが「AhaMove」。2012年に物流会社を起業して、2015年からアプリに参入。現在の主力は今年から始めた「バイク便」だ。

 

今年開始のバイク便がヒット

数人の若者が物流会社「ザオハンニャイン」を設立した理由は、「グルーポン」を前提としたものだった。2012年頃、グルーポンのようなネットでの共同購入型クーポンが流行して、ECと共に小売業が発展していた。これに伴い、荷物の配送業務が急伸していたという。

「特に地方のエンドユーザーからのニーズが増えて、配送量が増加しました。弊社を含めて参入企業も多くなり、次第にラストワンマイル・デリバリーのニーズが高まりました」

これは日本や欧米の物流会社のように、長距離間は主要物流ルートで配送し、各拠点で小分けして、各家庭などに荷物を運ぶサービス。ただ、同社は大規模な配送が主体で、多くの場所への小荷物配送や、緊急性の高い即時配送はできなかった。その業務をアウトソースするために生まれたのが、アプリのAhaMoveだ。

2015年8月にホーチミンでトラックとトライシクルでの配送をAhaMoveで始め、今年1月に「バイク版」をリリース。これが大当たりした。

その後ハノイにも進出したバイク配送は注文数が毎月50~60%増を続けて、6月現在(以下同じ)でハノイとホーチミン市を合わせて毎日約1200件の注文があり、約1000件が成立。注文が不成立となるのはサービス範囲外の配送依頼や、注文時にドライバーが近くにおらず、再注文になるなどのケースだ。

同社ではユーザーが注文してから確定までのAccepted timeは3分以内、確定からバイク到着までのArrival timeは20分以内、注文してからデリバリーが完了するまでのLead timeは1時間以内としている。

ザオハンニャインのスタッフたち

「ユーザーの半径500m以内のドライバーの位置情報をシステムが自動的にスキャンし、いなければ範囲を広げます。また、様々なデータを毎日集計して、注文の多い地域などをドライバーのアプリに通知しています」

事業を支えるのがドライバーのクオリティだ。特に本業を持つ人が多いトラックと比べて、バイクの場合はほぼ100%が同社からの収入だけだそうで、サービスに対する顧客の満足と彼らの収入確保のために、顧客ニーズとドライバー数を調整しているという。

また、同社ではドライバーの評価をアプリの顧客評価のみとしており、5段階で1ヶ月平均が4.6以上ではないと、パートナー提携は中止となる。厳しいようだが、毎日約1000件のうち90%が評価され、このうち実に95%が5つ星という高評価となっているそうだ。

AhaMoveの登録運転手はハノイとホーチミン市を合わせて、バイク・トラック・トライシクルの合計で約1700人。毎日稼働しているのがバイクで平均200~300台、トラックとトライシクルで70台ほど。ザオハンニャインの自社ドライバーは6人以上で、今後増加する計画だという。

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WinWinの配送方法

バイクで一番多い注文は、ショップから商品を受け取って、ECで注文した顧客に届けるケース。このようなEC系の配送では一般的に、荷物を届けたドライバーが顧客から料金を受け取り、契約している物流会社にそれを届けて、物流会社が店やECサイトに振り込むという。

同社の場合は2パターンあり、1つはドライバーが店にまず商品代金、仮に10万VNDならそのうち9万VNDを支払い、顧客から10万VNDを受け取って、差額の1万VNDを配送費として得る。もうひとつは、電子マネーのe-walletを使う。店に10万VNDを支払い、顧客から同額を受け取り、その後、ザオハンニャインが店からの手数料1万VNDをドライバーに振り込む。

「そのため弊社ではまずドライバーと面接を行い、提携したら振込用の銀行口座を開設してもらっています」

このシステムだと、ドライバーは配送後に物流会社に行く無駄が減る。同時に、最初に料金を立て替えるため、その現金を顧客から得るには「きちんと届ける」という責任感が生じる。

このためか、荷物が届かないなど失敗率は一般的に5~7%だそうだが、AhaMoveでは1%以下という。上記のユーザーによる高評価の、大きな一因でもあるだろう。

このように、同社の主要顧客はECで販売する中小企業などで、安定したニーズがあり、配送の頻度も高いという。 注文数では全体の8割、売上金額では9割を占めているそうだ。

「弊社の統計では、創業からの4年で小荷物配送の成長率が年間30~40%増え、特にEC系では70~80%の伸びを示しています。一方では、従来型の配送は全体的に落ちていますね」

同社のスタッフはハノイとホーチミン市に各100人ほどに増えて、ホーチミン市では狭くなったオフィスを移転させる予定。ただ、他の地域へのサービス進出は、現在の地域で安定したサービスを提供できるようになってから考えるという。

「ハノイとホーチミン市の2つの市場が安定したら、次は国内のほかの都市に展開する予定です」