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ユーザーが激増するベトナムの配車アプリ。世界でシェアを広げるUberやGrabが2014年に進出すると、昨年市場が急拡大。地場企業の参入も相次いだ。世界で、ベトナムで、今年も勢いが加速している。ベトナムのローカルアプリに絞って取材した。

 

 

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配車アプリは世界的にユーザーが急増中で、欧米と共にアジアでも成長市場となっている。法規制でトラブルとなるケースも少なくないが、Apple、GM、トヨタ自動車などの巨大企業も出資を始めた。ベトナムではどう発展したのか。

世界の巨大企業が続々と投資

アプリに関する市場データと分析ツールを提供するアップアニー(App Annie)社が発表した、「2015年アプリ市場総括レポート」によると、昨年は配車アプリと相乗りアプリのユーザーが世界中で急増したという。

特に顕著なのは中国、メキシコ、ブラジル、インドで、この新興国4市場では2015年第4四半期に、スマートフォンユーザーの20%以上が、主要な配車・相乗りアプリの1種類以上を日常的に利用したとのことだ。こうした「ライドシェア」の動きが各国で急速に浸透している。

多くの市場(国・地域)でシェア上位にいるのは、先駆者である2009年創業のUber。しかし、中国では乗車回数がUberの10倍とも言われるDidi Dache(現Didi Chuxing)、南米は99Taxis、インドはOlaなど、地域性が顕著なのも配車アプリの特徴だ(地図参照)。つまり、検索エンジンにおけるGoogleのような絶対的覇者はまだ確定しておらず、参入企業や提携企業が続々と登場している。

ただ、新規参入に不可欠となるのはドライバーだ。シェアトップクラスの配車アプリでも報奨金などでドライバーの囲い込みに注力している現在、資本力や競争力の少ない企業の発展は難しいかもしれない。

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注目されるのは提携企業で、タクシー会社やWebサイト(レストランサイトで掲載店への配車など)は既に一般的。昨年12月にはLyft(米国)、Didi Chuxing(中国)、Grab(東南アジア)、Ola(インド)という同業他社が連携し、他国での「ローミング」ができるようになった。

今年は大手自動車メーカーを中心とした大型投資が続いている。米ゼネラル・モーターズは米「Lift」に5億USD、独フォルクスワーゲンはイスラエルの「Gett」に3億USD、トヨタ自動車は米「ウーバー・テクノロジーズ」(金額未公表)、AppleはDidi Chuxingに何と10億USDもの出資を発表した。自動車メーカーの狙いは、各配車アプリを使うドライバーや企業への自動車リースだ。

配車アプリ等を使った人の輸送は「ライドシェア」(ドライバーと客の相乗り)と呼ばれ、一般化すれば自動車保有のニーズが減少し、自動車販売が落ち込むと考えられている。その布石としての動きと思われるが、将来的には自社で開発した自動運転車のリースや、配車アプリドライバーへの販売も見据えているようだ。

昨年からベトナムで一気に市場拡大

ベトナムでは2014年の2月にGrabTaxi、6月にUberが進出。東南アジアで抜群の知名度を誇る前者と先駆者としてシェアを広げる後者の参入で、一気に市場に火が付いた。今年3月のUber Vietnamの発表によると、ベトナム市場は世界で中国に次ぐ2番目の速さで成長中で、2015年は利用客数で世界55ヶ国200都市以上のトップになったという。登録ドライバー数も2014年末の300人から1年余りで1万5000人近くまで急増したそうだ。

その一方で、ベトナムの法規制との抵触もある。Uberはホーチミン市交通運輸局などに何度か摘発されて罰金処分となっているし、ハノイ市交通運輸局は、配車アプリを利用する9人乗り以下のチャータータクシーの総数規制を交通運輸省に提案した。

また、Grab社が交通運輸省公認で今年3月からGrabCarのサービスを正式に開始したが、現時点でUberは至っていない。この差は税徴取にあるようで、前者は提携する旅客輸送業者のリストや提携状況を電子化して管轄官庁に提供し、自社と輸送業者の税金納付を確実にしているが、Uber Vietnamの事業プランは交通運輸省に却下されたという。

このようにまだ法的なグレーゾーンも多いが、両社ともサービス拡大を続けており、そこに「待った」を掛けたのがローカルの配車アプリだ。本特集でも紹介したビナサンタクシーは昨年7月にダナンから配車アプリの導入を始めて、12月からホーチミン市でサービスを開始。同年8月にはAhaMoveとiMoveもサービスを発表した。全国展開するマイリンタクシーはGrab社と提携しているが、独自に配車アプリを始めるという噂もある。

昨年9月にはフーコック島で「Vrada」がスタート。ホーチミン市の交通運輸ソリューション企業のViet Traffic、携帯通信業大手のVinaphone、現地のタクシー会社Taxi Nam Thang Phu Quocが組んでおり、海外の観光客から人気上昇中のフーコック島内という地域性がユニークだ。同年11月には早くもホーチミン市に進出した。

その一方では、南米やアフリカで高いシェアを持つEasy TaxiはGrabTaxiと同じ2014年2月にサービスを始めたものの、1年後の2015年初めにはベトナムから撤退している。今後はベトナムというより世界中で配車アプリの淘汰が始まり、「業界ビッグ3」のような形で優勝劣敗が決まるのかもしれない。その時にベトナムの配車事情はどうなっているのか…。