定着率は福利厚生がカギ!日系企業の 取り組み
「矢崎EDSベトナム」「ソルテックベトナム」
「サウザンドクレインベトナム」「ギャラクシー・シダックス」
SOLTEC VIETNAM COMPANY
福利厚生は企業文化作りのために
ソルテック工業の子会社であるソルテックベトナムは、2010年に進出した企業。
フットサルコートなど福利厚生の多彩なアイデアは、「企業文化を作りたい」という社長の思いから生まれている。
企業文化や企業風土を育てたい
ソルテックベトナムは、工場で使われる生産設備のプラントの製作、据え付けなどを行う企業。設立してまだ5年目だが、売上げは前年比で約200%増と著しい成長を見せ、9割が日系企業という顧客の数も順調に伸びているという。
同社の製品は巨大なプラントで、一品ずつが顧客に合わせたオーダーメイドだ。ベトナム人従業員が手作業で作るために、いわば職人技が要求され、熟練者の定着は事業の要となる。
「2010年から視察を始め、2011年に赴任しました。ベトナムに来て感じたのは、どの企業でも従業員のロイヤリティーを高めるのに苦労しており、離職率が高かったことです」
そこで薛氏が考えたのは「企業文化」を作ること。福利厚生はもちろん大切だが、企業文化や企業風土を作っていく中に、結果として含まれればよいという。これには、彼が日本で6年在籍した、リクルート社での経験によるところが大きい。
「今で言うブラック企業でした(笑)。残業は多いし、土日出勤も当たり前。しかし、私を含めて皆が嬉々として働き、共に成長していました。その理由は独特の社風や企業文化にあったと思いますので、これを重視したいと考えました」
そのための取り組みはいくつかあるが、一つは四半期に一度開催するキックオフ会。約300人の全従業員が社員食堂に集まり、新入社員から社長までが一堂に顔を揃える。この場で今後の会社経営の方向性を伝え、優秀者の表彰などを行っている。
「弊社の競合はベトナム企業。普通、その従業員は経営者の考えを知らないし、社長の顔を見たことのない人もいるでしょう。それではロイヤリティーは上がらないし、会社のために頑張るという気も起きません。社員のやる気は企業の競争力を高めるので、会社の目指すところを少しでも伝えたいのです」
従業員に利益を還元したフットサルコート
従業員なら勤務後に誰でも利用でき、社内でチームを作ってのリーグ戦や、他社を招いての交流戦が行われているという。費用は日本円で数百万円とのことだ。
ただ、社員の定着率向上が目的はなく、これも企業文化を考えてのこと。「会社と従業員は一緒に成長する」ことを伝えたかったという。
社員旅行にもこうした思いが込められている。費用は全て会社が負担し、年に一度、全従業員を対象に行うのは一般的なスタイル。2014年はファンティエットに1泊2日で出かけたという。ただ、単なる旅行ではなく、前回であれば「GO TO the NEXT STAGE」を社員へのメッセージにして、食事の前にスピーチをしたり、ムービーを流すなどしたという。また、チームビルディングのために、従業員をチームに分けてゲームなども行ったそうだ。
「イベントでもフットサルコートのような設備でも、金額の多寡に関わらず、意味のないことはやりたくないと思っています。逆に言えば、お金を使わなくてもできることはある。例えば、弊社の1階には、全従業員の写真が並べて貼ってあります。こうしたことだけでも、勤務先への意識は強まると思います」
稼いだ金を使うから価値が出る
基本的に毎月開く、工場敷地内でのBBQパーティも会社負担だ。働くときは働くが、それ以外の時間は楽しんでもらいたいとスタートさせた。もう一つの狙いは、ポジションに関係なく皆で集まり、様々な話をする場を作ること。仕事以外で多くの従業員が集う機会はほとんどないからだ。
また、隔月で社内報の『ARIGATOU』を発行しているのには、皆の気持を一つにしたいからだという。
「従業員のパフォーマンスを上げるにはコストがかかりますが、その効果はすぐには見えません。迷う人もいるでしょうが、その判断をするのが経営者の役目。結果的にですが、弊社の離職率は10%以下で、3年勤務した人は5%を切っています」
これから進めたいことは、全従業員へのスマートフォンの支給と社員寮の建設。社員寮は洒落たシェアハウスにして、共用部には大型テレビやビリヤード台などを置きたいという。
「自分たちが稼いだお金で実現する。だからこそ価値が出てくると思います」
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