定着率は福利厚生がカギ!日系企業の 取り組み
「矢崎EDSベトナム」「ソルテックベトナム」
「サウザンドクレインベトナム」「ギャラクシー・シダックス」
GALAXY SHIDAX CO., LTD.
定着率を左右する「工場の社食」を改善
ベトナム人ワーカーの定着率に大きく影響する「社員食堂」。不味い、少ない、不衛生と
評価が低かった従来の「社食」を変えているのが、2013年に設立されたギャラクシー・シダックスだ
調理だけでない一貫サービスを提供
ベトナムの工場における社員食堂は、従業員のモチベーションを大きく変える存在だ。「社食」の味や量で転職・退職する人は珍しくなく、最悪の場合はストライキにまで発展する。
そんなデリケートな分野に、日系企業のニーズを受けて参入したのがギャラクシー・シダックスだ。日本で外食や給食事業を展開するシダックスと、ベトナムの大手給食会社であるギャラクシーとの提携で生まれた。
同社は設立後わずか1年半ほどで、売上を30~40%アップさせ、南北の各地に新たな社員食堂を展開してきた。顧客の80%以上が日系企業というが、同じ日系という理由だけで、ここまで事業は伸びないはずだ。
「ひとつには、食堂のレイアウト設計、食材の調達、調理、衛生管理、サービスまでを、一貫して提供している点が評価されたのだと思います。例えば、キッチンのガス台やシンクの場所なども、導線を考えるなどしてクライアント単位で提案しています」
顧客企業に派遣したキッチンスタッフが調理を担当。彼らには厳しい基準の衛生管理が指導されており、チェックリストに沿ったプロセス管理も行っている。このようにシステム化された運営方法も同社の強みとなっている。
また、食事の栄養価や従業員の健康にも気を配っている。ただし、その詳細は企業秘密とのこと。できるだけヘルシーな食事の提供を心掛けているそうだ。
「味」は当然のこと「量」へのニーズも
食事で大切なのはやっぱり「味」。これが、南部と北部で好みの味付けが異なり、甘い、辛い、薄味、濃い味と、顧客単位でもかなり差があるという。そのためメニューは、試食会の開催、従業員からのヒアリング、あるいは自分たちで食べるなどして、感想をフィードバックさせて作る。各社に給食委員会のような組織があれば、そこと話し合うこともあるという。
「新規の場合は新しく提案し、他社からの切り替えでは現在の内容をベースにして、お客様の不満を解決するようにします。味や内容を適宜変えていくこともありますが、考え抜いて新しいメニューを提案しても、『やっぱり定番がいい』と戻される場合もある。結構難しいのです」
このようにメニューを定着させるまでが一苦労なのだが、もうひとつ顧客がこだわるのが「量」だという。当然、1食当たりの価格というコストの制限もあるが、多く作りすぎて余らせてもいけない。一方で、「欠食」が出るとペナルティになるという。
「豚の煮付け、魚の塩焼き、鶏の唐揚げなどのおかずが人気ですね。また、ベトナム人は細身の女性でも、これでもかというくらい食べますから(笑)、量の優先順位は高いです。満足度の平均点を上げて行くことが大切ですね」
毎日の食事だから会社への評価に
ベトナムと日本を比較すると、給食の内容や手法は随分違うようだ。日本の給食は半調理済みの食材をうまく利用しており、レトルト食品やカット野菜を使うケースが多いという。一方、ベトナムでは生の食材を仕入れ、洗ったり皮をむいたりと手作業が続くので、調理の時間は長くなり、管理する工程も多くなる。何をするにも手間がかかるということだ。
また、従業員の「選択の自由」も日越の大きな差だと木内氏は言う。日本では地方の工場であっても、会社周辺の店に食事に行く人がいる。逆に言えば、価格の安い社員食堂でも利用しない人は普通にいる。
一方のベトナムでは、ほとんどの会社が料金を全額負担していることもあり、まず全ての従業員が社員食堂を利用する。
「そのため、食事の不満は会社への不満につながります。常に美味しいもの、量が多いものと、クライアントや従業員の方からのニーズは尽きません。だからこそ、私たちのやりがいもあるわけです」
2013年8月からはケータリングサービスも始めた。ドンナイ省のロンドウック工業団地の管理棟併設の厨房で、調理した弁当を工業団地内の工場に配送している。輸送コストはがかかってしまうが、ベトナムではなかなかサプライチェーンを構築できず、それが現在今の課題だという。
「今後は差別化できるメニューを増やすと同時に、軽食が食べられるカフェや売店のサービスを考えています。社員食堂と違って従業員の皆様にご購入いただくわけですから、よりリラックスできる環境を整えたいですね」
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