ベトナムの優良企業に取材!本音を探る
ホーチミン市シェアトップに、ハノイ進出は時期を待つ
ビナサンタクシー
VINASUN CORP.
Deputy General Director
Mr. Nguyen Bao Toan
2003 年の事業開始からわずか10 年、2013 年にホーチミン市での台数シェアトップとなったビナサンタクシー。当初より同社に参加し、現在はマーケティングとブランド化戦略を担当するトアン(Toan)氏が、成長の秘密と今後の戦略を語る。
シェアトップの背景に車とサービスへのこだわり
「現在、ホーチミン市には約1万2000台のタクシーが走っていますが、弊社はそのうちの5500台弱を占めます。企業向けのカード発行枚数は約1万枚、ホテルやレストランなどの待機駐車場所は1000ヶ所弱あり、これらも市場を牽引していると思います」
2013年にホーチミン市のタクシー台数シェアで、45%とトップに立ったビナサンタクシー。急成長の理由を尋ねると、「多角化を進めずにタクシー事業に注力」と「顧客ニーズの研究の継続」という答えが返ってきた。後者の例を挙げると、まず車へのこだわりがある。
「ベトナム人の好みは『きれいで新しい車』です。我々は常に新車の提供を心掛けており、4〜5年で古い車を売却して新車を導入、トヨタ車のみを使っています。また、現金での支払いを嫌がるお客様もいますので、全ての新車にはカード支払機を設置しており、100%の完備を目指しています」
タクシーが会社所有であることも成長の背景にあるという。別のタクシー会社や個人と提携すると、運転やサービスの質を担保できず、売上を重視しないドライバーも出てくるからだ。同社ではドライバーの教育にも注力しており、歩合の割合がタクシー会社の中で一番良いという自負を持っている。
ベトナムのタクシードライバーは基本給なしの歩合制が一般的だが、同社の歩合は1日200万VNDでドライバーが63%、会社が37%の割合。これ以上の金額になるとドライバーの割合が上がるが、同社タクシーの1日の平均売上は200万VND以上だそうだ。
ドライバーへの教育も常に実施。入社時の研修のほか、接客・マナー・サービス研修、カード支払機への研修もある。また、「バットマンチーム」と呼ばれるメンバーが抜き打ちでドライバーをチェック。一般客として乗車し、接客態度や服装などを調べ、問題があれば本部に報告しているのだ。そのおかげで、約1万1000人のドライバーのサービスをコントロールできているという。
「サービスの向上に役立てているのは日本のタクシーです。私は東京や名古屋などの大都市に行ったことがありますが、常に『ありがとうございます』などの挨拶があり、荷物も率先して運ぶ。本当に感動しました。日本の専門家に頼んで社内に『日本式』を取り入れたこともあります」
クオリティの維持が課題、ハノイ進出は時期を待つ
ホーチミン市に集中してシェアを伸ばしたビナサンタクシーは現在、ポテンシャルを持ついくつかの新たな地域に、進出予定があるという。ただ、多くの地域へと手を広げすぎて、業績を落とす企業もある。同社では全国展開の危険性を熟考し、市場調査を進める必要があるとしている。具体的には各地域で顧客のニーズ、収入、習慣などが全く違うので、その特徴を調べているのだ。例えば、ホーチミン市では週末に外出する人が多いが、ハノイでは家で過ごす人が多く、祝日のイベントをホーチミン市では夜に行うことが多いが、ハノイでは昼間が多いという。
地域展開と言えば、気になるのは以前から噂されているハノイへの進出。その予定はあるものの、今は適当な時期ではなく、様子を見ている状況だとToan 氏は語る。
「ハノイには100以上のタクシー会社があり、サービスに対するコントロールができていない状態です。加えて、北部と南部とで人の性格が違う。弊社は南部の文化ですが、現在のクオリティを北部で維持するための、現地ドライバーのトレーニングが簡単ではありません。時期が来たら進出します」
システム化や市場調査が今後のビナサンを作る
近年ではタクシーのIT化が進んでおり、タクシー配送アプリの「Grab」や「Easy taxi」がベトナムに浸透しつつある。
「スマートフォンの普及も技術の進歩も早く、ベトナム人はうまくキャッチアップをしていくと思います。こうしたアプリは将来的にはライバルになるので、弊社も市場に参加していくでしょう。また、カーナビなどGPSを用いたサービスは導入したいのですが、インターネットのインフラの事情もあって、現実的に難しいと思います」
設立時にはタクシーが27台しかなく、タクシーのサービスは一般的によくなかったという。それが現在、同社は約5500台のタクシーを持ち、サービスの質や管理システムなどを向上させ、大きな成長ができたという。これから進めたいこととは何か。
「社内的にはマネジメント層のスキルアップと、人事や納車などの日常業務をシステム化することです。もう一つは以前から続けてきた市場研究で、事業拡大のためにより高めたいですね。カスタマーケアにも投資していくつもりです」
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