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日本企業が成長の糧、目標は売上高30~40%増

 

FPT ソフトウェア

FPT Software
Ho Chi Minh
Director
Mr. Nguyen Duc Quynh

 

1998 年に設立されたFPT ソフトウェアは、日本企業からの受託開発で実績を積み、今では東南アジア最大級のITアウトソーシング企業へと成長した。ホーチミン支社長のクイン(Quynh)氏は元エンジニア、企業経営も計画的だ。

日本企業のオフショア先、ベトナムシフトが受注増に

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撮影/大池直人

「事業を始めた当初、受注先の顧客は欧米の企業でしたが、インド企業が攻勢をかけてきたのです。そのため、1999〜2002年はスタッフを維持するので精一杯でしたが、日本企業が中国に代わるオフショア先を探していると知りました」

F P T ソフトウェアの躍進はここから始まった。2001年に日本の大手ITベンダー子会社から、5000〜1万USD程度の小さなプロジェクトを受注。そこから日本との取引が広がり、その過程で厳しい品質管理やビジネスマナーなどを吸収していったという。ポスト中国にはフィリピン、タイ、韓国なども候補だったはずだが、その中でベトナムが選ばれたのは韓国がコスト高だったのと、ベトナムが日本と似た文化を持っていたせいだろうとQuynh 氏は見ている。

「弊社は現在、世界中の企業と取引をしていますが、売上の50%以上は日本からです」

受注する案件は企業の社内情報システム開発が多かったが、近年ではモバイル系、クラウド、アプリ開発へと基軸が移ってきた。こうした変化に伴って主流となる技術や開発手法も様変わりしているが、同社では1年に10〜20日、技術スタッフに技術やコミュニケーション力向上の研修を施しているという。

Quynh 氏は1996年にハノイの大学を卒業したが、前年からFPTのインターンシップに参加していた。その経験から、個人の創造力を発揮できると感じて入社を望んだという。

「スタッフが自由に意見を出せて、上司にも気軽に提案できる文化が気に入っています。それは現在でも変わっていません」

エンジニアに必要なスキル、全社的にバックアップ

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オフィスにある開発チーム

近年のもうひとつの変化は創造力への期待増だ。仕様書に従って作る企業情報システムよりも、ゲームなどのアプリ開発ではアイデアや企画力が重視される。同社ではエンジニアに様々な支援を行っている。

「社外の開発コミュニティとの連携、アプリ開発セミナーの開催、モバイルアプリコンテストなどのスポンサーにもなっています。こうした場では技術や開発手法のトレンドが話されますし、参加者に弊社の知名度や信用が上がるというメリットもあります」

また、世界的な流行となっているハッカソン(プログラマなどのエンジニアが技術力とアイデアを競い合う開発イベント)はベトナムでも開催されており、こうしたイベントやセミナーにも社員を積極的に参加させているという。

開発の手法やプロセスには国によっても異なる。例えばプログラマは、日本ではチームの中の一存在だが、アメリカでは単独のクリエイターと見られる風潮が強い。こうした傾向を同社は顧客とのやり取りを通じて実感しており、日本企業ではルールの順守が求められ、アメリカ企業にはやり方を一任される場合が多いという。

「日本人と接してプロセスを勉強することも、アメリカ人の『丸投げ』からよいアイデアが生まれることもあります。大切なのはバランスを取ることで、ベトナム人に欠けているのはこうしたプロの開発手法、プロセス、仕事のマナーだと思います」

企業の生命線を担う人材、今後はベトナムの問題解決を

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社員食堂で食事をする若いエンジニアたち

日本企業から受注する仕事のレベルも変わってきた。以前はプロジェクトの一部を任せられていたが、現在ではその顧客と一緒にプロジェクトの企画段階から入り、必要ならエンドユーザーにヒアリングし、見積もりまで一緒に作って、そこから設計・開発に進むという。

開発期間の短縮化も大きな課題となった。外国企業との苛烈な競争から、日本企業は多くの商品を短期間に作ることを迫られている。そのため、顧客企業が単独で1年かかる期間を6ヶ月、あるいは3ヶ月にしなければならないという。

「日本企業の知識と弊社の大規模リソースを合わせて、新しい製品を短期間で開発しています。例を挙げればクラウドTV。クラウドのシステム、テレビの中のファームウェア、コンテンツ、ゲームアプリなどを共同開発しています」

今後の戦略の手も緩めない。最も重要なことは「毎年の売上を最低で30〜40%増やすこと」であり、これを目標にしているという。そのためのカギは人材であり、人材を伸ばす教育であると考えている。必要なのはスタッフによる自らのスキルアップであり、そのバックアップをしていくつもりだ。

「将来的には、今まで多くの顧客を通じて蓄積した技術やアイデアをベトナムで活かして、様々なプロジェクトの問題解決につなげたい。ベトナムでの困難を解決できるようにするつもりです」