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仕事も生活も充実 ベトナムはベスト3に入る国

 

森 英範氏
Hidenori Mori
KOKUSAI LAND (VIETNAM) LIMITED
Project Development Department
General Manager

日本のゼネコン、ベトナムで大型案件を建設

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森 英範氏(撮影/大木宏之)

メーリンポイントタワー、ノボテルガーデンプラザホテル(現・パークロイヤルサイゴンホテル)、タントゥアン輸出加工区の工場……鹿島建設のホーチミン市所長時代に森英範氏が建設したものだ。赴任したのは1995年から1999年。

「第1次ベトナム投資ブームのころで、日系企業の進出が始まった時代。工業団地も少なく、少し経って日系企業が続々と入ってきました」
森氏が鹿島建設に入社したのは1971年。1976年にインドネシアに赴任して以降、在職した38年中約30年で海外案件を担当した。ベトナムでの仕
事は商業ビルや工場建設のいわば総監督で、プロジェクトマネジャーとベトナム南部地区のジェネラルマネジャーを務めた。

2009年9月に退職。同年10月に日本アジアランド(現・国際ランド&ディベロップメント)に入社し、同月に再来越した。仕事はコンストラクションマネジメント(CM)で、日本では工事監理に近い職種という。

日系企業が日系ゼネコンに建設を発注したくても、予算の関係で難しい場合がある。ローカル企業は一般的に価格は安いものの、品質や工期を不安視する施主もいる。そこで日系企業とローカル施工業者の間に入って、設計から引き渡しまで、場合によってはネゴシエーションも含めてサポートするのがCMだ。建築の専門経験、現地建設業の慣習や法律の知識、施工業者とのネットワークや人脈が不可欠となる。

「特にメーカーの海外工場は、操業時期が決まると遅延が許されません。その工場で作る部品などがサプライチェーンに組み込まれるため、操業が遅れると最終製品が予定通り出荷ができないからです。ですから、私たちも工期には神経を使います」

モノによって差はあるものの、ビル系の工期は2年ほど、工場はクリーンルームなどのないシンプルな平屋で6〜8ヶ月程度とのことだ。森氏が担当したCMの案件は、現在進行中のものを含めて3年で17〜18件。全てをオンスケジュールで進めてきたという。

コミュニケーション次第、ベトナム人はよくやってくれる

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鹿島建設時代から現在まで、森氏はどのようにして品質や工期を順守してきたのか。そこにはベトナムにおけるビジネスのコツも見えてくる。

「例えば現地の施工業者に対して、『依頼して遅れたら怒鳴る』ではいけません。毎週のように進行をチェックして、必要があればその都度軌道修正し、トラブルを察知して未然に防ぐことが大切です」

そのために欠かせないのがコミュニケーション。森氏はローカルスタッフや現地の施工業者の責任者と、積極的にコミュニケーションを取っていたという。地鎮祭などの機会があればローカル店に飲みに行き、気軽に声をかけて一緒に騒ぐ、関係者の結婚式にはできる限り出席するなどだ。

そのためか、メーリンポイントタワーは工期が遅れても仕方のない状況だったが、契約通りに引き渡しが終わり、関係者にとても喜ばれたという。

「特に最後の建設ラッシュはすごかった。作業員は夜通し頑張ったし、100人ほどの人たちが一気に内部を清掃してくれたこともありました。ベトナム人は働かないとか融通が利かないという人がいますが、私には『よくやってくれた』という思い出しかありません」

対等に接することも大切だという。ベトナム人はプライドが高いので、上から命令する、面と向かって怒鳴る、大声を出すなどの、短気な姿は見せないようにしていたという。例えば、人目のある場所で叱ると、反省する以上に、恥をかかされたという反感を抱いてしまう人もいる。時には辛抱強く接することも肝要ということだ。

また、10ヶ国もの海外経験を持つ森氏は、ベトナムに限らず、現地のカルチャーに柔軟に対応するように心掛けていた。
「必要以上に期待せず、与えられた条件を是として努力する。短期的な視点で考えていたら、うまくいくものも失敗してしまいます」

日本に比べれば不便でも「住めば都」

数多くの国で働いてきた森氏にとって、ベトナムはベスト3に入る国とのこと。仕事も生活もしやすいという印象を持っていたからこそ、再来越を決めた。

「対日感情がよいと言われますが、私もそう思います。また、彼らは話を真摯に聞いてくれるし、年長者を敬う傾向も強い。英語で説明すると責任者レベルでは内容を理解してくれます。生活面では、日本に比べれば不便さを感じるときはありますが、住めば都ですよ」

ベトナムビジネスの3ポイント

・気軽に接して、人間関係の垣根を取る
・怒鳴らず、叱らず、対等な対応を心掛ける
・必要以上に期待せず、現地の文化に柔軟に対応する