ベトナム日系企業の原材料・部品の現地調達率は34.2%(JETRO調査:2016年)です。直近6年間で10%以上上昇したものの、依然としてアジア・オセアニア地域主要国の中では最低水準にとどまっており、しかもその現地調達先の約半分は同じ現地日系企業が占めています。ベトナム政府は、国内の裾野産業の発展を重要政策として掲げており、その中心となるのが中小企業(SME:Small and Medium Enterprises)支援政策です。

SME支援に関する政令56号では、小企業(工業分野では従業員10~200人、総投資額200億VND以下)および中企業(同200~300人、200億~1000億VND)が定義されており、SMEがベトナムの全企業に占める割合は、従業員ベースで98%、総投資額ベースで95%(統計総局サイトより:2011年)に達しています。

政令56号は、財政支援(政府保証、SMEファンドなど)、生産施設・技術の革新・向上、市場拡大の促進、人材育成などの各種政策を掲げていますが、具体的な制度の整備はこれからです。また、一部のSMEを対象とする4年間17%の法人税率優遇制度もありますが、減税率が小さい上、利益の出ていないSMEが多いため、インパクトは大きいとは言えません。

さらに政府は昨年秋の国会に、技術革新ベンチャー、加工生産業、主要産業のバリューチェーン参加など、限定された分野のSME支援法案を提出しました。ただ、国会議員から他の支援制度と重複する点や、対象企業が多すぎるなどの意見が出ており、次の国会では政府修正法案が上程・審議されるものと見られます。

元気のよいベトナムSMEが経済発展の推進力となる日のために、実効性のある政策が期待されます。

小幡 葉子
Obata Yoko
TMI総合法律事務所ハノイオフィス勤務。日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。1992年より雨宮眞也法律事務所にて企業法務を担当、JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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