トナムの不動産規制は未だ社会主義的な側面が強く、外国人や外資系企業による不動産関連の権利は限定された状況です。ただ、2014年7月施行の土地法と並び、ベトナム国内の不動産投資促進に向け外資開放へさらに舵を切る不動産事業法が、今国会で成立する予定です。

現行法では、外資系企業に対し、仲介・鑑定・広告・管理・コンサル等の各種不動産事業を認めているほか、いわゆる(外資を含む)デベロッパーに対して、例外的に当該不動産の分譲・リースを認めていました。この点を応用し、デベロッパーの買収により、開発後の建物に関するリース等の権利を事実上取得する動きが、ファンドを含む外資系企業の間では多用されてきた訳です。

また、開発当初は非当事者だった内装工事業者等を、追加的に開発プロジェクトへ組み込む等の技巧的手法も見受けられるようになり、「筋の良くない」当事者介入とも相まって、開発認可当初には想定不可能な不動産案件の混乱・破綻例も散見されるに至りました。

不動産関連法制が5年に一度の見直し時期にある現在、不動産投資需要と昨今の同問題点解決に動いたベトナム政府は、開発案件の当事者変更手続きの明確化等、その動静への監視を強めると共に、建物購入・賃借による分譲やリース・サブリース事業の外資解禁を決断しました(ただし関連法令抵触等は現在審議中)。

いわゆるマスターリース解禁となることで、現行のレンタルオフィス等の技巧的需要も一定程度低下するため、今後の業界は大きく変わるかもしれません。現在、既に外資系企業に発給された非開発案件によるサブリースライセンスは、パイロット事業的位置づけであり、新法施行後の実務が注目されます。

野口 真吾
Noguchi Shingo
渥美坂井法律事務所に勤務する日本国弁護士・ベトナム外国弁護士。2012年に韓国系越内最大手JP参画。2013年にヴァン(Van)氏(元計画投資省次官、現司法大臣夫人)所長のAPACに出向。
http://www.aplaw.jp