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015年、タイビン市人民裁判所は、禁固17年の不当な有罪判決を受け、3年にわたって服役していたある男性に対し、賠償額として過去最高額となる230億VND(約1億円)の支払いを認めました。この賠償金は国家予算から充てられることが決定されました。

このような刑事補償については、国家賠償責任法に基づき、賠償金を求めることが可能であり、刑事訴訟活動において賠償責任を有する機関は、警察などの捜査機関、人民検察院または人民裁判所とされます。

日本の刑事補償法が補償金額について、勾留または拘禁の日数に応じて1日1000円以上、1万2500円以下の額等と規定しているのと同様、ベトナムの国家賠償責任法も請求者が財産、実収入の減少、精神的損害、健康被害等の損害を立証して賠償金を請求できます。また、精神的損害の賠償額の計算方法は、暫定留置、勾留、懲役刑の執行を受けていた日1日につき、3日分の最低賃金とされています。本件では、財産、実収入の減少分の額が特に大きかったようです。

上記事件では、認容された賠償額が高額で国家予算から充てられたことから、税金を納めている国民の中には、当該賠償額は損害を惹起させた者個人が負担すべき、との批判の声が挙がったようです。この点、日本とは異なり、ベトナムの国家賠償責任法においては、刑事訴訟活動で故意に損害を惹起させた公務執行者は国家に対し、国家が賠償した金額を返済する義務を負う、と規定しています。もっとも、実際上は損害を惹起させた公務執行者からどのぐらい回収できるかは疑問とされています。

いずれにしても、このような事件とは無縁であることを願いたいものです。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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