んにちは、AGSの辻です。さて、今回も前回に引き続き個人所得税(PIT)についてご案内いたします。前回は「ベトナムで申告すべき所得の範囲」についてご説明いたしましたが、今回のテーマは「ベトナム源泉所得の判定」です。

前回のコラムでは、ベトナムPIT法上、「非居住者」であれば「ベトナム源泉所得」のみをベトナムで申告するとお伝えいたしました。「ベトナム源泉所得」とは文字通り、ベトナムで発生した所得を指しますが、ベトナム現地法人から支払われる給与と同義ではありません。以下でベトナム源泉所得の判定に係る規定を見てみましょう。

【通達111/2013/TT-BTC 18条抜粋】非居住者のPITを申告するに当たり、全世界所得からベトナム源泉所得を分離できない場合、以下の計算方法によってベトナム源泉所得を計算する。

「ベトナム源泉所得=全世界所得×滞在日数÷365日 *全世界所得にはベトナム課税所得となる手当も含まれる」

つまり、ベトナム現地法人から給与が出ていなくても、ベトナムでの滞在日数ベースでベトナム源泉所得を計算することになります。上記のような日割り計算が煩雑なため、実務上はベトナム現地法人から一定の給与を支給されている法人様が多いようです。

日越租税条約に基づく短期滞在者免税制度もありますが、役員報酬には適用できなかったり、申請してもその都度承認されるわけではないことから、適用されている事例は多くありません。PITの申告漏れにより追徴課税を受けるケースも散見されますので、ご自身のPITについて疑問をお持ちの際は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。次回は、PITの短期滞在者免税制度についてご案内いたします。

辻 雄太
Tsuji Yuta
AGSホーチミン事務所に勤務する米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
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