地化をミッションとされている人は多いかと思いますが、とても自然にコミットされているステキな経営者にお会いしました。この方はかつて、日本で外資系企業に勤務していた経験をお持ちで、当時の外国人上司は駐在員。仕事もでき、日本人メンバーのことも考えてくれて、「ずっと一緒に仕事がしたい」と思わせるような上司だったといいます。それが、あの東日本大震災が起きると一変し、「本社の命令で帰国しなければならない。大丈夫、日本が好きだから落ち着いたら帰ってくる」と言い残すと、すぐに国外へ避難。以降、音信不通で再び日本に戻ってくることはなかったというのです。

「元々ひどい上司ならまだよかったのですが、いい上司だっただけに逆にショックが大きかった」と彼は言い、その後、待遇はよかったものの外資系に勤めるモチベーションが低下して退職。「外国人は仕事にはコミットできても、その国や社会には本当の意味でコミットはできないんだ」と、日常では気づかなかったことに気づかされたといいます。

「そんな自分が初めて外国人上司になったのがベトナムです。会社のことや、メンバーのことは100%考える。ただ、あの震災時の経験から、ベトナムで同じようなことが起こったら100%コミットできる自信は正直ないんです。トップマネジメントは、この国に何が起こってもコミットできる人間がやらないとメンバーを混乱させる。だからトップはベトナム人に」という強い意志をお持ちでした。彼の会社は、実際スタッフが生き生きと働いていて業績も好調です。メンバーがうまく働けるための仕掛けや仕組みも大切ですが、やはりトップのスタンスも同じくらい大切なのだなと改めて感じました。

加藤 将司
Kato Masashi
JACリクルートメントベトナムManaging Director。大学卒業後、大手人材紹介会社を経て、一貫してベトナム人材の紹介や採用&育成に関わり、今年で12年目。2013年6月より現職。
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