回は、ベトナム現地法人が親会社などの海外企業から人材の派遣を伴う役務提供を受け、支払いを行う場合の税務上の注意点ついて解説いたします。

まず法人税法上では、役務提供代金が損金算入できるかどうかが問題となります。役務提供の内容が、投資ライセンスに照らして適切であることを前提に、契約書・内容報告書・完了報告書・金額の妥当性を示す書類等を準備することをお勧めしております。なお、法人税の2016年4月時点の税率は通常20%となります。

次に個人所得税についてですが、外国人がベトナムで勤務し、給与などの報酬を得る場合、ベトナムにおいて個人所得税を納税する必要があります。これは、労働許可証の所持や給与の支給場所とは関係がありません。また、役務提供代金のうち、給与等の所得税の課税対象が明確に区分されていない場合、当該海外送金額の全額が個人の所得税の対象と見なされるリスクがあることに注意すべきです。なお、非居住者の場合、個人所得税の税率は一律で20%となります。

最後に外国契約者税について説明いたします。海外の企業が、ベトナムにおける役務提供から収益を得た場合、外国契約者税が課税されます。通常は、ベトナム側契約者が源泉徴収を行い、納税を行います。外国契約者税では、契約書に税金の負担関係を明示することが重要です。なお、一般的な役務提供は法人税部分5%、付加価値税部分5%となります。

このように、役務提供代金の海外送金では複数の税目に及ぶ検討が必要となるため、具体的な資料の準備や運営方法については、専門家に相談することをお勧めいたします。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
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