回は仕入れVAT控除の要件となる「レッドインボイス」について解説して参ります。

ベトナムでは仕入れVAT控除において、「インボイス方式」が採用されています。これは課税事業者が発行するレッドインボイスに記載された税額のみを控除できる方式です。課税事業者にはレッドインボイスの発行と、自ら発行したレッドインボイスの副本の保存が義務付けられており、当局による管理のため、使用前の登録及び使用状況のレポートが求められます。

レッドインボイスには、VATレッドインボイスと販売レッドインボイスの2種類があります。VATレッドインボイスは税率及び税額を記載する区分があり、控除法によるVAT計算をする企業が使用する、一般的なレッドインボイスとなります。一方、販売レッドインボイスは税率及び税額を記載する区分がなく、直接法によるVAT計算をする企業が使用します。販売レッドインボイスには税額の記載がないため、当該販売レッドインボイスを入手した企業には、控除できる仕入れVAT税額がありません。

ベトナムは複数税率(10%、5%、0%)を採用しているため、仕入れVATの計算を行うためには、レッドインボイスに適用税率・税額の記載が必要となります。その他、税務調査時に仕入れVAT控除不可及び法人税損金不算入とされないよう、買主及び売主の情報や取引内容、日付等の法定記載事項に十分注意して発行する必要があります。さらに、レッドインボイス紛失等のケースは罰金の対象にもなるため、この点からも、インボイスの管理を厳重に行う必要があると言えます。

次回はVATの輸出免税の要件について解説致します。

津田 栄治
Tsuda Eiji
AGS ハノイ事務所に勤務する日本国公認会計士試験合格者。住宅メーカー・商社で海外駐在。メーカーでの経理を経て、2013 年より現職。法人設立、会計税務などを担当。
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