回は、外国企業が保税倉庫を利用する取引に際しての外国契約者税(以下FCT)について、想定されるケースを例に取って解説いたします。

仮に日本法人A社(外国契約者)がベトナム現地の保税倉庫を利用して、自社製品を保税倉庫にストックしていたとします。そして、そのA社が、ベトナム現地法人であるB社向けに同保税倉庫から小口販売したとします。

外国契約者であるA社がベトナム国内(ベトナム領域内)でB社に物品を引き渡すという販売行為をした場合は、FCTの課税対象取引となり得ます(通達103第6条2項&7条2項)。保税倉庫はベトナム国内であるという見解のオフィシャルレターも発行されており(OL:15075/TCHQ-GSQL)、A社のように保税倉庫を利用した取引は輸出入取引とみなされず、FCT適用対象と考えられます。

ただし、同通達2条5項では、保税倉庫を利用して国際輸送・通過・仲介をサポートすること、または他の企業による加工の目的で保税倉庫を利用する場合は、FCT対象外であるとされています。一見、保税倉庫を利用する外国企業はFCT対象外とも読み取れますが、国際輸送・通過・仲介のサポートは、外国企業へのサポート(外-外取引)を想定しており、加工目的での保税倉庫利用は、FCT対象外である最終製品が外国企業に再販されるケース(同通達1条2項)を想定していると考えられます。つまり、保税倉庫を活用すれば、外国契約者税の課税が掛からないという単純な構造ではありません。そのため、自社のケースが対象外に該当するかどうかについては、商流を慎重に検討することが肝心で、必要な手続き等については専門家に相談することをお勧めしております。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
http://ags-vn.com