理の内部統制についての解説の最終回である今回は、内部統制が適切に運用されているかどうかを評価する際のポイントについて説明いたします。

前号で解説した業務マニュアルがすでに制定されていることを前提に、①内部統制がマニュアル通りに運用されているか、②内部統制が適時機能しているか、の2点に従って行います。運用状況の評価手続きは、質問、観察、調査といった確認作業(関連文書の閲覧や、内部統制の実施記録の検証)と、再実施の組み合わせで行います。

ここでは、「実地棚卸の当日、資材部において担当者が実地棚卸一覧表と在庫データ一覧表の照合表を作成する。その後、資材部長が、この照合表に承認の証跡としてサインをする」という内部統制の運用状況を評価することを想定します。①内部統制がマニュアル通りに運用されているかを確かめるためには、すべての照合表を閲覧し、上長の承認印があることを確認します。②内部統制が適時に機能しているかを確かめるためには、実地棚卸差異からサンプリングによって数件を抽出し、原因調査の結果を確認する、といった手続きを行います。

運用状況の評価手続の結果、ルール外の事項があった場合には、内部統制が有効でない可能性があり、マニュアル見直しの検討が必要となります。例えば、上記例で原因調査が十分になされていなかったとしたら、原因調査の状況につき、定期的にレポートを作成するなど、常にマニュアルの改善作業を行う姿勢が必要です。

内部統制の運用状況の評価は大切な項目である現預金、債権債務、在庫それぞれの管理プロセスについて、優先的に実施することをお勧めいたします。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
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