回から2回に渡り、ベトナムにおける人件費の項目についてまとめさせていただきます。従業員満足度の向上のためにも、税務的な意味でも、この機会に支給項目を見直してみることをお勧めいたします。ベトナム人従業員の人件費には、次のような項目があります。

①基本給、②各種手当(役職手当、言語能力手当、昼食手当、通勤手当等)、③時間外労働手当(時間外労働の日や時間帯により異なる割増分が設定:労働法10/2012/QH13第104条)、④個人所得税(税額込みの総額による契約【いわゆるグロス】の場合は給与額に含まれる)、⑤公的保険料(社会保険、健康保険、失業保険があり、3ヶ月以上の労働契約で加入義務が発生し、基本給および固定的な手当を含む対象金額に対して一定率の支払い義務)、⑥労働組合費(労働組合法に基づく支払い義務:労働組合法12/2012/QH13第26条2項)、⑦その他の福利厚生費(パーティーや社員旅行の費用などが該当し、従業員の年間平均給与の1ヶ月分を上限に損金算入可能:通達96/2015/TT-BTC第1条2項30)、⑧ボーナス(支払規則の整備により損金算入可能)、⑨その他(未消化の有給休暇の買取、該当者に対する退職金の支給、年次健康診断費用等)。

なお、最近の改正で、昼食手当につき、個人所得税における非課税所得の上限が73万VND/月へ引き上げられました(通達26/2016/TT-BLDTBXH、第22条4項)。このように、人件費に関連する法令は頻繁な改正が行われる傾向があり、税務上の利害に関わる場合もあるため、不明点がある場合には専門家への相談をお勧めいたします。

次回は日本人の人件費について解説させていただきます。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
http://ags-vn.com