越の国の法律相談 No.019

ベルヌ条約に基づく
著作権制度

一昔前のベトナムでは、日本のテレビドラマやハリウッド映画などのDVDが大量に売られていましたが、現在では無料映画サイトやアプリでさらに手軽に見られるようになりました。どちらもほとんどのコンテンツは、著作権者の許諾を得ていない「海賊版」です。

また、ソフトウェアの違法コピー率も、年々低下しているものの、世界全体で37%、日本は16%のところ、ベトナムは74%となっています(2017年BSA調査)。

ベトナムの著作権制度は、日本も加盟しているベルヌ条約に基づくもので、著作権成立には登録は不要、同条約加盟国で成立した著作権は、ベトナムでも保護されます。保護期間は、映画・写真・応用美術は最初の公表から75年、その他の著作物は著作者の生存中および没後50年ですが、著作物を創作した個人には、著作物の命名・著作者氏名の表示・著作物の同一性保持を含む著作者人格権が、期間無制限で認められています。

長い時間を要する
著作権侵害の根絶

2019年2月には、国民的コミック『ベトナムの神童(Than dong Dat Viet)』のキャラクターの著作権をめぐり、作者が降板した後、作者に無断で別の漫画家が作画して連載を続けていたとして、出版社を訴えた訴訟で、2007年の提訴から12年後にようやく作者勝訴の判決が下されたことが話題となりました。長期化の原因は、裁判所が和解・調停・協議による解決を追求し、2018年12月まで一度も法廷が開かれなかったという事情によるもののようです。

著作権を管理する文化・スポーツ・観光省著作権局は、長年にわたって「海賊版」の摘発を続けており、最近では、2017年6月に無料映画サイトの一斉取り締まりが行われましたが、効果は長続きせず、根絶まで相当の時間がかかりそうです。

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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