今回は、事業経営において「将来起こるであろうこと」に着目し、どのような状況でも価値ある存在として、事業を続けていくための考え方についてご紹介します。

予期せぬ異常に人は鈍感になってしまう

人間には「正常性バイアス」という、予期しない異常に対して心の動きが鈍感になる心理メカニズムがあります。

例えば、東日本大震災では津波のサイレンを聞いて、実際に避難した人は全体の10%で、90%はテレビをつけることにとどまり、実際に津波を見てから逃げるという行動をとったそうです。

企業における組織行動でも「正常性バイアス」と同じことが起こり得ます。目の前の危機に対応することは出来ても、将来起こりうる可能性がある危機には鈍感になり、対応が後回しになってしまうことがあるのではないでしょうか。

起こりうる危機を察知して転機と捉える

例えば、環境問題に関する政府の規制にも当てはまります。化石燃料の排出規制がさらに強まって、既存の企業活動に大きな影響が出てくるのは自明の理です。「将来起こると分かっていること」に鈍感にならず、現状を変えていくキッカケとして活かせる企業こそ、競争優位を作り続ける持続可能な事業運営ができるのだと感じます。

スウェーデンのNGO団体のザ・ナチュラルステップの創設者、カール=ヘンリック・ロベール博士が以下のように述べています。

1.私たちの将来に起こるであろうことを、科学的にキャッチしてあらかじめ、将来の制約条件を知っておく

2.将来の制約条件を織り込んで、どんな価値を提供するのかをビジョンとして描く

3.そのビジョンを実現させるための鍵となる領域を明確にして、今出来ることと将来のために投資することを明確にする

「正常性バイアス」に左右されず、着実に将来にむけて歩むために、少しでも早く、戦略転換を意図したアクションを起こしていくことが大事ということです。

 

荒澤 文寛 Arasawa Fumihiro
株式会社ビジネスコンサルタント入社後、各国の責任者を経て、
ベトナム法人を立ち上げ。現ジェネラルダイレクター。
Business Consultants Vietnam Co., Ltd.
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