前回まで1人ひとりのセルフエスティーム(自尊心)が組織の生産性に大きく影響するというお話をさせていただきました。今回は、どのようにセルフエスティームは高まるのかをご紹介します。

セルフエスティームの向上

皆さん、こんな例えを聞いたことがありますか? 私が飢えた人に魚を与えれば、その人は空腹でなくなる。私がその人に魚の釣り方を教えれば、飢えることはもうないだろう。しかし、自分で魚の釣り方を学ぶような状況を作ってあげれば、その人は飢えないだろうし、セルフエスティームが高まるだろう。ここに人財育成の本質がある気がします。

人材育成のポイント

我々が年間3500社以上の皆さまとご一緒させていただく中で大事にしていることは、修羅場7割、薫陶2割、教育1割が人材育成のポイントだということです。組織力強化や人材育成をサポートさせていただく会社でこのようなことをお伝えするのは憚られますが、誤解を恐れずに言えば、組織力強化、人材強化のためには、教育だけでは1割ほどの効果しかありません。大事なことはどんな修羅場をアレンジするか、薫陶を受けるチャンスを創るか、どんな教育を受けるかを効果的に組み合わせて取り組みを行っていくことです。

もっと言えば、教育目的の取り組みは結果に結びつきづらいです。なぜなら、教育は本来の目的、目標を達成するためにある手段であり、教育を目的にした取り組みはうまくいきません。また、コミュニケーションやモチベーションも同じです。これらはあくまで成果結果を出すための手段であり、目的ではないからです。組織力強化、人財強化にしても、働いてくれている社員が真に豊かな人生を過ごしてもらうためにも、仕事を通してこのセルフエスティームを高めていくことが必須だと考えられます。

組織も個人もセルフエスティームを高めることで、共に財務的資本も、社会関係資本も豊かになっていくことができるのではないでしょうか。

知識 大輔 Chishiki Daisuke
日本で営業所長を務めた後、中国法人で5年間、総経理、董事長を経験。2020年8月からベトナム法人のゼネラルダイレクターとして就任。
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