ブランドイメージを変える! 日立のベトナム戦略
日立製作所 vol.19
ベトナムで長く事業を続ける日立製作所が、2013年に法人化した日立アジア(ベトナム)。都市鉄道の設備一式など、多分野の大型案件を次々と受注。動き出した日立のベトナム戦略を安藤社長が語る。
鉄道受注はイメージ戦略
―― 御社の設立は2013年と最近ですね
安藤 1972年にカントーの発電所向けに発電設備を輸出したのが、日立製作所とベトナムの付き合いの始まりです。
その後、1990年代の日系企業進出増に併せて1994年にホーチミン市に、1996年にハノイに事務所を設立し、2013年に日立アジア(ベトナム)として法人化されました。経済成長が期待されるベトナムに今、本腰を入れて事業拡大を進めています。
―― 御社の役割とは何でしょうか?
安藤 ひとつはベトナムに8法人、18のオフィスがある日立グループの統括、まとめ役です。お客様には様々なニーズがあり、1社だけでは応えられない場合もありますから、各事業を横串に通した、ベトナムでの日立の窓口となっています。同時に、ブランドのイメージ戦略も担っています。
もうひとつは弊社の事業として、電力、水処理、都市計画などを提供しています。ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線もここに入ります。
―― 車両だけでなく信号システムなど設備一式を受注したこの1号線が話題です。この受注にはどんな目的があったのでしょうか?
安藤 当然ですが、ベトナムのインフラ発展に貢献したいという思いが強くあります。ただ、日立のブランドイメージを変えることが大きな目的でした。ベトナムで日立のイメージは、誰に聞いても「冷蔵庫」なんです(笑)。一方、日立は「インフラとITで社会イノベーション」を掲げていまして、そのイメージをベトナムに浸透させたいと思っています。
鉄道車両や信号機、券売機、改札機、ホームドアなどは目に見えるものですし、高架式駅舎内の昇降機(エレベーターやエスカレーター)も受注しています。ベトナムの人たちにこれらに接してもらうことで、徐々に日立のイメージが変化すると期待しています。
―― イメージ戦略のために鉄道を受注ですか。
安藤 ベトナムでの事業拡張のためにも有望です。今後は1号線のノウハウを他の路線や都市に展開させたいですし、事業を都市開発にまで広げれば、マンション、医療施設、エネルギーなどに幅広くつながっていきます。インフラという部分では、ホーチミン市建設投資管理局から共同受注した、大型下水処理場の拡張工事などもあります。
―― IT関連ではどんな事業を?
安藤 三井住友銀行さんと国営企業のベトナムポストと共同で、郵便局のネットワークなどを用いた非現金決済サービスを調査中です。
現在のベトナムは現金決済が主流ですが、郵便局が持つ全国のネットワークを使えば、都市間の送金や海外送金などがITで決算できるはずです。昨年11月から始まったばかりですが、今年中に何らかの方向性が出せると思います。
ITのシステムは横展開ができますから、例えば非現金決済用のICカードやプリペイドカードを、鉄道やショッピングモールとリンクさせられます。決済用のカードで乗車やショッピングもできるようになります。
モノを売るメーカーの立場だけでなく、このように提案をしながらソリューションを提供できるのが日立の強みだと思っています。
―― 他国でもこうした事業展開が多いのですか?
安藤 そういうわけではありません。ベトナムではメトロ1号線を軸にしていますが、その国に合わせた事業戦略を立てています。
忍耐強く果実を取る
メトロ1号線の車両
メトロ1号線の車両内部
―― 赴任されて約2年、ベトナムをどう思いますか?
安藤 私は高校・大学時代をアメリカで過ごし、シンガポールにも5年駐在しました。これまで自分のナショナリティーをあまり意識したことはなかったのですが、ベトナムで初めて感じました。
なぜなら、ベトナムの人たちによく「あなたは日本人か?」と聞かれるのですが、そうだと答えるとビッグスマイルが返ってくるんですね。他の国にない親日性を感じますし、過ごしやすくて、いい国ですね。
また、ベトナム人は真面目ですが、日本人の真面目さとは違います。なぜこれをするのか、どうして必要なのかを明確に伝えないと、きちんと動いてくれないことが多いと思います。
―― 今後の計画は何でしょうか?
安藤 ベトナムは果実を取るのに時間の掛かる国だと思います。ですから、何事も忍耐強く進めていくことが大切だと考えます。
また、繰り返しになりますが、「冷蔵庫」のイメージを「社会イノベーション」に変えていきたい。そのために必要な案件は今後も取りにいきます。
Hitachi Asia (Vietnam) Co., Ltd. General Director 安藤彰人
1971年生まれ。大学卒業後に株式会社日立製作に入社。昇降機の海外営業部を経て、2002~2007年にシンガポール支社に営業課長として赴任。帰国後は昇降機海外営業部長を経て地域戦略本部で日立のアジア・パシフィック戦略に携わり、2014年4月にベトナムに赴任して現職。
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