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技術や営業など「本業」が優先される結果、日系企業の「人事部」は機能不全の状態だ。仕方がないかもしれないけれど、それでいいのか? 採用、評価、給与、リテンション、組織作りまで、人事は全ての事業の根幹だ。今一度、人事の仕事を真剣に考えるため、現状の課題と解決策を各業界のプロに尋ねた。

 
 

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今年から人事制度の案件が増えたと語るのは、人事、組織、人材育成などのコンサルティングを行うJIN-G (Vietnam)。まず「経営理念」を決め、上位概念から制度構築を進めるべきという。

 

日本企業の得意な「社風」に注目

「従業員10人以上で、進出から10年前後経った会社さんが多いですね。営業や製造の安定、従業員の増加、日本本社からの依頼、マネジメント層の育成などが課題で、人事制度の改善を望まれています」

ただ、「どんな会社でありたいか」という、軸となる経営理念が決まっていないと、制度だけを単体で変えても効果が期待できない。経営理念があり、それに基づいた経営戦略や組織戦略があって、その次に報酬、等級、評価といった人事制度が決まってくるという。

経営理念とは、従業員が自分ごととして理解し、実現したいと思うことが大事。佐々木氏お気に入りの事例は「Make Fan」。この一言で企業の目的が伝わるし、社員も何をすべきかがわかる。「ファンを作る」ように社員が動けばそれが連鎖し、社内外に広がっていく。

これは社風や企業カルチャーとも近く、日本企業の得意分野。実はこうした理念作りは世界的に注目されているそうだ。経営理念の作成プロセスは、経営層のトップダウンやベトナム人マネジャーのディスカッションなど様々だ。

「Re-Cultureをテーマにコンサルティングを行っています。人事制度の設計だけでなく、企業の文化を高めていく仕組み作りを制度設計でお手伝いします。企業文化を体現する人材を定着させ、増やすこと。その際に迷ったら立ち返るのが経営理念です」

上位概念から制度・運用へ

同社では経営理念の決定から人事制度の運用まで、じっくり取り組むことが大切であると提唱している。だが、ベトナムでは数ヶ月で制度の設計を求められる場合が多く、その場合は最短で5ヶ月と考えている。

「①従業員満足度や課題の実態把握」、「②人事基本構想の立案」、「③人材要件・行動規範の立案」、「④人事制度の構築」、「⑤管理職向け説明、評価者の研修、社員向け説明」を各1ヶ月ずつ行う。評価や給与にも関わるので、各工程を始める時には社員に告知して、納得してもらうことが大切だそうだ。

「特に感じるのは評価者が育っていないこと。ゴールへのコミットやマネジメントの意識が低いので、マネジャー層を含めた従業員の意識改革も必要になります」

人事制度を構築・運用してもすぐに結果を出すのは難しく、本当の意味でうまく回り始めるのは数年から10年先になるという。

ただ、変えるタイミングはどの企業にも必ずあるので、いかに踏み込んで実践するかがカギになる。

「ベトナム人に合った制度を作りたいという方もいますが、『〇〇人』という考えた方はしなくてよいと思います。どんな会社にしたいのかが、やはり大切なのです」